植木等、死去

これが遺作


 植木等が亡くなった。享年80歳。近年はほぼ引退状態であったが、昨年にアルバム「50周年記念ベスト 日本一の無責任大作戦」も出ており、東宝クレージー映画も次々とDVD化されるなどちょっとした植木等ブームであった。アクションフィギュアまで出ていたのは知らなかった。

。少し前にBSの番組に出ていて、若き日の思い出を語っていた。当時の映像を交えて、語る植木さんはお元気そうで、終始笑顔であった。息子の比呂公一も登場し、自然と話は音楽の話に。ラストではクレイジー・キャッツの生き残り、谷啓犬塚弘桜井センリと共に一曲やるという企画であったと思うが、はっきりとは覚えていない。谷啓トロンボーンが70過ぎの爺さんとは思えないほど達者で対照的に犬塚弘はベースを弾くのは何十年ぶりだ、と語っていた。ニコニコしながらピアノの前に座る桜井センリにそして植木等も実に楽しそうであった。それが私が見た最後の植木等だった。(テレビでだけど)

 映画にもよく出演した。代表作と言うとやはり無責任シリーズ、日本一の男シリーズ、クレージーシリーズなどの東宝クレージー映画になるのだろうが、個人的には老境に入ってからの諸作品「」、「新・喜びも悲しみも幾歳月」、「塀の中の懲りない面々」、「あした」などの作品が好きで特に好きなのは1984年の「逆噴射家族」の爺さん役である。

 住宅ローンの重圧に悩み、受験のためにおかしなくってしまった息子を憂い、神経症になってしまう小林克也。その父親が植木等なのだが、本人は至って能天気でその呑気な言動はますます息子の神経症を加速させてしまった。自宅にシロアリがいることから完全におかしくなってしまった小林克也家族全体をキチガイと断定して、心中を呼びかける。完全におかしくなった家族は互いを敵とみなして、スィートホームは戦場となった。爺さんは先の大戦での軍服を着込み、軍刀を引っさげて参戦孫娘の工藤夕貴を犯そうとする見事な狂いっぷりを披露した。

 クレージー映画はそんなに見ていないが「ホラ吹き太閤記」での木下藤吉郎に扮した植木さんの「ハイイイイ!」という威勢のよい声は今も耳に残っている。それから1962年の若い頃に出た「如何なる星の下に」。若い売れっ子歌手で女をもてあそぶ悪い奴。悪びれずに自分に散々尽くしてきた女を棄て、新しい女を口説く軽薄な男を楽しげに演じていた。遺作は今年公開の「舞妓Haaaan!!!」。12年ぶりの出演作品が遺作となった。

 中学生の頃から古い時代の歌が大好きだったので、植木等の「スーダラ節」「五万節」「ハイそれまでョ」「だまって俺について来い」「遺憾に存じます 」などなど。。ラジオで録りためた歌をしょっちゅう聴いていた。一番好きなのは「五万節」。「学校出てから14年〜♪」とかよく鼻歌交じりに歌っていた。

 植木さんは若い頃に声楽の勉強をしっかりしていたので、声が綺麗によく透った。いつも明るい、気さくな人柄でよく笑う人であった。植木等と言えば思い出すのは、相好を崩したくったくのない笑顔である。晩年までそのスタイルを貫き、シュッとした洒脱なお爺さんであった。合掌

50周年記念ベスト 日本一の無責任大作戦

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結成50周年 クレイジーキャッツ コンプリートシングルス HONDARA盤

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