宗方姉妹 1950年 松竹大船

☆宗方姉妹 2/3 高槻松竹セントラル(女性映画傑作選10)
★★
小津安二郎が松竹を離れて新東宝で撮った作品。ニヒリストの夫に耐える姉と自由奔放に生きようとする妹の物語。姉が田中絹代で妹が高峰秀子

 自分はどうも小津の映画が性に合わないので、そんなに楽しめなかったが、山村聰演じるニヒリストめいた夫の描き方に肝を冷やした。職を失い、毎日を陰鬱と過ごす。なのに、妻は文句一つ言わずにしかも惚れている男、上原謙がいるのに自分と夫婦を続けている。上原はいまだに妻を思い続けて独身を貫いているのだ。我慢できずに遂に彼は妻の頬を打つ。このシーンを小津はロングでまざまざと描き出す。この男、最低であるが心情を思いやるとわが身が痛くなるほど気の毒に思えてくる。しかも田中絹代はここまでされて、少しも戸惑った顔を夫に見せないのだ。。夫の為に店を閉める姉に腹を立てて店の備品をめちゃくちゃに壊してしまう妹を見て、夫が高らかに笑うシーンも印象的だ。

 しかし小津は、全くこの男の心情に興味を持っていない。古きよき日本の家庭を描き続けた小津だが、ここまで冷酷に人間を描くとは思わなかった。山村聰上原謙ってなるとどうしても成瀬巳喜男の「山の音」を思い出してしまう。ラストはいつもどおりで、「ああやっぱりね」という感じなんですが、ドキリとさせられた映画であった。

宗方姉妹 [DVD]

宗方姉妹 [DVD]