三婆 1974年 東京映画
☆三婆 1/28 高槻松竹セントラル(女性映画傑作選10)
★★★★
→有吉佐和子の同名小説の映画化。亡くなった資産家の本妻(三益愛子)と資産家が晩年愛したお妾さん(木暮実千代)と行かず後家で生娘のババアになってしまった、資産家の妹(田中絹代)の奇妙な同居生活を抱いたホームドラマ。
この三人の女優の演技合戦もすごいが、くどくなく、くさくなく、うまくテンポよく進めたのは監督の力であろう。監督の中村登は松竹大船撮影所で女性映画の名人だった人なのでホームドラマはお手のもの。きっちりと見せてくれる。井手俊郎の脚本も会話劇をしっかり書き込んで面白いものにしている。
3人の中で一番すごかったのはやっぱ田中絹代。少女のまま、おばあさんになったのでひどいわがままで世間知らず、そして平気で嘘をつく。恐ろしく、手がかかる。迷惑な婆さん。こういう人は実際にいます。この婆さんをリアルに描いた。田中絹代って小津安次郎や成瀬巳喜男の映画のイメージが強いが、「三婆」の強烈な婆さんは全てを吹き飛ばすほどすごかった。彼女の処女性を逆手にとった、うまい役柄だったと思う。本人も楽しかっただろう。
三益愛子は泣き芝居以外はあんまりできない人で、泣きの芝居でおいしいところだけ、さらってしまう「母物」を得意にした女優さん。田中絹代、木暮実千代に比べると見せ場はあまりないが、夜中に化粧をべったり塗って贅沢な着物を着て醜悪に鏡にニヤリと笑ってみせるシーンがぞっとした。それを見た木暮さんがキャーと逃げてしまうのだが、私も逃げたくなった。
娘に棄てられた「薄幸の老人」を演じてた有島一郎も見事。ポツポツと喋る台詞回しに味があって聞き込ませる。それから若き日の吉田日出子も出ていますが、今と感じが変わってませんでした。彼女もデビューがあと10年早かったらもっと喜劇女優として活躍しただろうにねえ。
- 作者: 有吉佐和子,宮内淳子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/06/10
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