パッチギ!

パッチギ! 1/22 MOVIX京都シアター2
★★★★
→「のど自慢」の不振、「ビッグショー!ハワイに歌えば」の大不振で持って映画界からパージされた井筒和幸であったが、容赦なく映画を切って棄てる批評に何にでも意味無く噛み付くというキャラで自らが有名になって、自身の映画の価値を挙げるという大島渚方式で見事に復活を遂げた。なお井筒の毒舌であるが、これはテレビのためにやってるというのではなくて、どうやらこれはこの人の習性らしい。駆け出しの映画監督時代にコラムを書いているのだが編集者に「精神科医に行け」と言われるほど暴力的な映画批評を書き殴っていた。「僕が世の中に言いたいことはアホ!ボケ!カス!である」とか書いてあるらしい。まあこの人はこういう人なんでしょう。井筒は若い頃、自主映画でポルノを撮っていたことがあり、金集めも大変にうまかった。文章も書けるし、脚本も書ける器用な人であったがその器用さで随分、この人は遠回りしてしまったと思う。ディレカンの失敗を一身に背負い、一時期は映画界から身を引いていた時もあった。前作の「ゲロッパ!」は凡作であったが、映画に勢いがあって”映画監督井筒和幸”の復活をアピールするのろしのような作品であった。そしてそれに続く「パッチギ!」。画面からビリビリと気迫が伝わってくるような力作であった。非常に荒っぽい作品であるし、ラストは綺麗にまとめすぎだとは思う。しかしテンポが早くて圧倒的に面白い。ラストの鴨川での喧嘩まで飽きずに見ることができる。「ロミオとジュリエット」をモチーフに68年当時の京都の町を舞台にした、高校生と在日の女の子の恋を描くという演出が成功していて、ストーリーを面白くしている。こうした設定を思いつくところなんざあ、まだまだ感性が古びてない。今後もこの人には期待できる。嬉しくなった。フォークルの「イムジン河」を引っ張り出してくるところなんかうまいねえ、惚れ惚れしちまう。主演の塩谷瞬は演技は荒削りであるが、素直に感情を出せる演技をしてて好感が持てた。こうした役柄は演技がうまいと逆にうそっぽく見えるのでよかったと思う。沢尻エリカ高岡蒼佑も然りですな。それから高岡蒼佑の親友役である波岡一喜も井筒が好きそうな感じで要所要所で印象深かった。コメディリリーフにはケンドーコバヤシ加瀬亮、それから坂口拓ケンコバは明らかに高校生は違和感ありまくりだが坂口拓が意外に違和感がなかった。オダギリジョーも楽しそうであったなあ。この大ヒットを経て井筒は次どこに行くのか。「のど自慢」が日本映画に興味を持つきっかけとなった私としては気になるところである。ヒットしてよかったね、と素直に喜びたい。よかった、よかった。

のど自慢 [DVD]

のど自慢 [DVD]

性春の悶々 [DVD]

性春の悶々 [DVD]

ガキ帝国 [DVD]

ガキ帝国 [DVD]

岸和田少年愚連隊 [DVD]

岸和田少年愚連隊 [DVD]

パッチギ!

パッチギ!

サルに教える映画の話

サルに教える映画の話

あの娘をペットにしたくって

あの娘をペットにしたくって