☆やっさもっさ

☆やっさもっさ 1/5 シネ・ヌーヴォ(社会派コメディの変遷「渋谷実前田陽一」)
★★★
渋谷実監督作品。原作は獅子文六獅子文六は当時の流行作家で「大番」などの代表作で一世を風靡しました。戦争が終わって無気力に生活を送る小沢栄太郎と積極的に社会に進出していく淡島千景の夫婦の物語。若い頃の淡島千景は本当に見とれるぐらいに綺麗で映画全体がパッと華やぐようで目のご馳走。小沢栄太郎は日本映画の黄金期を長く支えた俳優で出演作品も多いが主演は珍しい。落ち着いて、渋くいい声をしています。大好きな俳優さんです。本作ではうらぶれた感じで人生をなんとなく過ごしている、と言う感じが出ている。彼のファンはまず見るべし。外人と結婚したパンパンの”バズーカお時”(なんちゅう名前だ)こと倉田マユミとのやり取りが心に残る。おっそろしく乱暴なパンパンを等身大の人物として演じた倉田マユミはこれがデビュー。力強く、堂々とした女を熱演しています。「ぼんち」でもよかったけどこの人はもっと評価されるべきだろう。戦争が終わった直後、魂が抜けたようになってしまった男性が多くいたと言います。戦争で目的を見失ってしまい、茫然自失となってしまった。林家木久蔵の父親もそうで戦後に離婚しているそうです。そうした男性に対して新憲法のもと保証された自由の中で女性は社会に進出していきます。そうした時代背景でのストーリーで混血児や産児制限運動など時代を感じさせる設定もそこそこも見られて映画の背景を色濃いものにしています。若い頃の山岡久乃菅井きんが出ているのも見逃せませんな。