☆仰げば尊し

仰げば尊し 10/11 高槻松竹セントラル(特集上映人生名画劇場)

→松竹大船の”反逆児”渋谷実の遺作。1965年の「大根と人参」を最後に松竹を離れた渋谷実はその翌年に本作を東京映画(東宝)で監督。そして、その14年後に世を去ります。もしかしたら病だったか、活動をテレビか舞台に移したのか、何か事情があったのかも知れませんがこの時、59歳。あまりにも早すぎる引退です。かつてナンバー2を争った木下恵介が76歳まで作品を撮り、テレビでも多くの作品を残したことと比べるとあまりにも寂しいではないですか。そして惜しい。大島渚によると松竹のスタッフは「○○組」という自負が強く、監督によってスタッフが固まっていた。渋谷組のスタッフも「渋谷実に最高の映画を作らせよう」と頑張っていた。松竹を辞めたあとに渋谷監督はフリーとしてそうした「渋谷組」が作れなかったのではないだろうか。松竹で長く監督をした割にはこの人に対する評価や評伝はほとんど存在しない。本当に謎の監督である。ただ言えるのは、本作は出来栄えが決してよくない、ということだ。本作が遺作というのは非常に残念。渋谷監督と脚本の松山善三は社会派の視点を隠し味にブラックユーモア仕立ての喜劇にしようとしたんだろうが、どう考えても笑えん。題材が暗すぎるのである。教え子が組合運動に疲れ果てて自殺するところからその予感はあったが、中盤まで何が言いたいのかわからずに後半ではっきりとわかった時にその題材に頭を抱えた。はっきり書くと自殺に始まって流産で終わる映画を見て笑える人なんかおらんのだ。ラストに大暴れする小沢昭一はシャレですまされず、悪ふざけもいい加減にせえと気分が悪くなった。松竹のくびきが外れたから暴走してしまったのか、完全にやりすぎなんである。期待していただけにがっくり感も多く、ひどく疲れた。。