☆無法松の一生

無法松の一生 10/1 高槻松竹セントラル(特集上映人生名画劇場)
★★★
→剣戟王として戦前の映画黄金期を縦横無尽に駆けた阪東妻三郎の代表作。バンツマと言えば、田村高廣田村正和のお父さんとしても有名であるが、この人の全盛期の人気は半端なものじゃなかった。それは今残っている作品を見るだけでも当時の熱狂振りがビシバシ伝わってくる。「決闘高田の馬場」の疾走シーンから18人の敵を舞を舞うように斬っていく様なんざあ、もう筆舌に尽くせぬドキドキもんである。そうしたチャンバラ映画の第一人者であったバンツマも後半生に「王将」や本作のようなドラマにも名作をたくさん残している。戦争中から占領軍統治時代にチャンバラ映画が禁止されたのでドラマに活路を見出した、言わば必要に迫られてのものであったと思うがそれが役者の幅を広げることになった。本作は富島松五郎の生涯を描いた物語の映画化でバンツマは乱暴だが気風のいい車夫を演じている。戦争中に作られた作品なので悪人も出てこないし、松五郎の吉岡夫人への仄かな恋心もばっさりと切られており、ドラマには乏しい。しかし圧巻なのは後に「羅生門」で日本一のカメラマンになる宮川一夫のカメラ。息が詰まるかけっこのシーンも印象的だが何より、ラストの太鼓を打ち鳴らす松五郎に多重露光を効果的にかぶせて見事な回想シーンを作り出している。バンツマの何とも人懐っこい笑顔が映画をとても気持ちいいものにしている。胸がスッとするような作品。なお、本作で吉岡青年の少年時代を演じたのは長門裕之

剣戟王 阪東妻三郎

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純情無頼―小説阪東妻三郎 (文春文庫)

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阪東妻三郎傑作選 DVD-BOX

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無法松の一生 [DVD]

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