☆ぼんち 6/23 高槻松竹セントラル(市川雷蔵映画祭)

☆ぼんち 6/23 高槻松竹セントラル(市川雷蔵映画祭)
★★★★★
市川崑監督作品。山崎豊子の小説の映画化で先に松竹が津川雅彦で映画化を進めていたのだが、山崎が原作権を渡したのは市川雷蔵を主演に考えていた大映の方だった。山崎は市川雷蔵のファンだったらしい。が、雷蔵は好きだったみたいですが市川崑と脚本の和田夏十はきらいだったようで「市川さんの繊細な演出ではぼんちは描けない」と発言したり、撮影所に乗り込んできて中止を要求したりと一悶着あったらしい。山崎豊子も若かったということか。ぼんちというのは大阪の船場言葉で船場の御曹司のことを言う。「夫婦善哉」の柳吉のようなダメ男とは違い、気品があって度胸が座ってて遊びも商売も綺麗にこなす粋な船場の旦那のことを言う。ストーリーの中心は雷蔵演じる喜久治をめぐる芸者の若尾文子、仲居の草笛光子、ホステスの越路吹雪、仲居頭の京マチ子の逢瀬。喜久治を手中にするために本妻の中村玉緒を離婚させてしまう、祖母の毛利菊枝に母の山田五十鈴のキャラクターが強烈。頼りなさげに愛嬌を振りまきながらもシャンとした気品を見せる雷蔵の演技が見事。戦争をはさんだ時代の移り変わりを描いており、船場が没落してからの喜久治も描いている。山崎が文句をつけたのはここの部分であったらしいが、若い頃から年寄りになった喜久治までを雷蔵はやわらかな船場言葉できっちりと演じている。黒光りする廊下を滑っていく白足袋の白さがまぶしい。女中として雷蔵を見てきた倉田マユミの独白が余韻をつけてラストをしめくくっている。傑作。

ぼんち [DVD]

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ぼんち (山崎豊子全集)

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