神軍平等兵、天国へ凱旋

奥崎謙三、死去

肩書きは作家でも運動家でも自営業者(奥崎先生はバッテリー屋さんをやっていた)なくて、「日本兵」なんですね。記者様もこの人の職業になんて書いていいのかわからんかったんでしょう。別冊宝島361「囚人狂物語」のインタビュー(出所直後の98年頃。。だと思う)によると獄中であみだした「血栓溶解法」で120歳以上生きると公言していましたが、えらくあっさりと。根本敬にだまされて「神様の愛い奴」でアナルファックされてから、7年近くたっていましたが一体、何をして暮してたんでしょうか。インタビューでは「血栓溶解法」を啓蒙するだの永久エネルギーという「落ち目の人が必ず最後には言うよな」みたいなことも書いています。出所直後は数十人の支援者がいて、私服刑事が張り付いていたらしいですが、糞尿ぶっかけられたり、アナルファックされてる奥崎謙三を見てこの人についていこうと思う人がいたんやろか。「神様の愛い奴」ね。私も興味あったんですが、本田透レビューを見て(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル (((( となり、いまだに見てません。

新聞記事によると

出所後は1人暮らしで、近年は病気がちだったという。昨年8月に自宅で倒れているところを発見され、入院生活を送っていた。死ぬ直前まで院内で「バカ野郎」と叫んでいたという。

発見者はやはりケースワーカーだったんでしょうね。病院でも相変わらず、「俺を誰だと思ってるんだ!」だの「なんだ、貴様!」とか怒鳴りまくってたみたいでその姿が目に浮かぶようですね。病院の方々は本当にご苦労様だったと思う。こういう人が一人ぐらいはいてた方が世の中、オモロイと思わんでもないが近くにいたらたまったもんやない。
 
 「ゆきゆきて、神軍」のきっかけは奥崎謙三今村昌平が興味を持ったことだった。当時、今村昌平は「にっぽん戦後史・マダムおんぼろの生活」の企画をしていて、題材探しの一環で天皇に向かってパチンコを打ったことで逮捕されていた奥崎謙三を取材していたのだ。天皇の証人尋問の申請を行ったり、法廷で小便したりとかやりたい放題だったらしい。当時、彼の存在は左翼でも有名で「ヤマザキ天皇を撃て!」*1が出版されたり、選挙に出馬したりとかで支援者もそこそこ多かったらしい。が、言ってることはあのとおりにめちゃくちゃだったので支援者もどんどん呆れて去っていった竹中労が「心情右翼行動左翼」と称したように、彼の思想は左翼と相容れるものではなかったのだ。奥崎の思想については彼の本を読んでないので、よくはわからんし、あまり理解したいとは思わない。が、映画を通じての彼の姿は反戦主義者でも天皇否定論者でもなさそうだし、映画のクライマックスになるはずの人肉を食べた疑惑にも興味がなさそうで遺族(この人達は別の意味でイッていた)を「私の言うことをきかない」と斬り捨てたりとかやりたい放題。この人のことはあんまり真面目に考えないほうがよさそうだ。

 その時期に声を掛けたのが今村昌平に紹介された原一男奥崎謙三にとっては天皇にパチンコを打つことも人を殺すことも自分の考えを世の中に発表する機会(彼はメディアという言い方をする)であってドキュメンタリーはうってつけであった。原監督はご愁傷様としか言いようが無い。。。1983年、奥崎は撮影中に元上官の息子に銃弾を打ち込む。幸い、命は助かったが殺人未遂で懲役12年の判決を受けた。なんでもこの時、選挙に出馬中だったとか。87年、事件の顛末をそっくり記録した「ゆきゆきて、神軍」が公開。ロングランの大ヒットになり、87年のキネマ旬報読者選出ベストテンのトップとなった。奥崎にとっては「メディア」に訴えるために銃弾を打ち込むなんてえことは全然大したことではなかったのかもしれない。実際に映画はヒットして奥崎謙三の名前も有名になったが、本作品はできたばかりのミニシアターで大ヒットを記録して、大手配給とは違って独自に選んだ映画を配給できるミニシアターの存在感を示すことにもなったのだ。本人は全く知らなかっただろうが。何にせよ、戦後60年という節目の年にきっちり亡くなった。こうして話題になることも彼にとっての「メディア」だったのか。合掌

ゆきゆきて、神軍」がまた見たくなってきた。明日、借りてきます。それから本格的に加筆して感想文書きます。

奥崎謙三服役囚考―あいまいでない、宇宙の私

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ゆきゆきて「神軍」の思想

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ヤマザキ、天皇を撃て!―“皇居パチンコ事件”陳述書

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非国民奥崎謙三は訴える!!!―「ゆきゆきて神軍」の凱歌

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ゆきゆきて、神軍 [DVD]

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神様の愛い奴 [DVD]

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*1:なぜか地域の図書館にもあった。割と売れたらしい