神童 - ほぼ日本映画専門サイト「キネマの星座」

★神童　５／６　みなみ会館
★★★★
→出ているキャストが素晴らしいので、出来栄えに若干の物足りなさは感じるがよくできた作品である。

　監督は「帰郷」で自分の世界をつかんだ萩生田宏治。何気ない日常を丁寧に描き出すことで、観客にキャストへの等身大の思い入れ、感情を生み出させ、ドラマに深みを与えていくのがうまい監督である。「帰郷」の西島秀俊、片岡礼子も素晴らしかった。役柄にキャストをはめ込むのでなくて、そのキャスト、俳優に合った役柄を与えてやることで俳優の力量を引き出してやる。そういうタイプの監督である。

　成海璃子、松山ケンイチはもちろんだが、西島秀俊、串田和美、吉田日出子、貫地谷しほり（眼鏡が意外によく似合うな。はじめて可愛いと思った）、浅野和之の使い方もうまい。成海璃子は随分大人びた女の子なので、中学生には見えないシーンもあったが、松山ケンイチと並ぶとやっぱり中学生の女の子。天才特有の癖のある一面にあわせて、幼くして様々なものを背負いすぎて途方にくれた少女としての一面も見せる演技をしていた。うまいね、この子。

　その彼女の相手役が「セクシーボイスアンドロボ」も絶好調な松山ケンイチ。ワオはうたの庇護者でもあり、憧れでもあり、また教え子でもある。その絶妙な間合いをよく出していた。受けの芝居、つまり相手のアクションに付随する形の演技、リアクションが中心になる芝居、がうまい。こういう俳優は脇役ができるので、今後も楽しみです。