次郎長三国志シリーズリメイク予想キャスト 地の巻

本企画は現在、シネマヴェーラ渋谷で絶賛上映中(すごい入りらしいが)の「帰ってきた『次郎長三国志』とマキノ時代劇大行進!」のラインナップである次郎長三国志シリーズ(1952〜54 東宝)がもしリメイクされるならば、どんなキャストがいいか?という、何の意味もないアホな企画の第二弾です。第一弾はこちら

関東綱五郎

オリジナルでは森健二。歯切れのいい下町言葉で暴れまわる江戸っ子で懐にはいつもピストルを隠してる、生粋の喧嘩好き。ここはヤクザ映画のキャストでいきたい。年をとっても、チンピラがうまい寺島進兄さんが適役だろう。寺島兄の予定が詰まってる際にはリキプロダクションから山口祥行。少し三枚目も欲しいので沢村一樹もいいかも

小政

オリジナルでは水島新太郎。シリーズでは登場が少なく、石松と入れ替わりのように出てくる。史実では「全身是肝」を地で行く切り込み隊長で命を大切にしないヤクザ者で早く死んでいる。最もこの命を大事にしないぶりは病弱だったということの裏返しで、悲しい男でもある。このキレっぷりはやはり窪塚洋介であろう。もしくは「背負い富士」でも同役を演じた水橋研二コメディリリーフっぽく使うなら、塚本高史でも可。

森の石松

オリジナルでは森繁久彌東宝は当初、森繁の石松には難色を示したらしいが、マキノが森繁に合った石松にしますから、と説得したらしい。従来の気障な石松と違って、どもりでオッチョコチョイでお人良しで愛らしい石松が出来上がった。それだけに「石松開眼」の死に様が涙を誘うのだ。。ここは一番伸び盛りの役者にやらせたい(森繁もこの作品で売り出して、「夫婦善哉」で日本映画を代表する俳優になった)ので、やはりここは市川染五郎の出番であろう。舞台や映画で見せる、高い身体能力もさることながら、三枚目のような茶目っ気が出せるのが強み。「硫黄島の手紙」で演技開眼の二宮和也なら少し影のある石松もやれそう。「背負い富士」で石松をやった山本太郎もハマリ役だったので再登板もいいなあ。

追分三五郎

オリジナルでは小泉博。女たらしの二枚目で腕も切れるが、だらしない気性に軽口の癖が災いして一家に災いを呼び込む。トラブルメーカーだが一家を愛する気持ちは皆と一緒。見せ場も結構ある。嫌味なぐらい男前がよろしいな、しかも色気がぽたぽたこぼれるような。オダギリジョー玉山鉄二がハマると思う。ニヒルを加えるなら、二宮和也も当たり役だろう。

三保の豚松

オリジナルでは加東大介。第四部から登場。堅気の漁師で婚約者までいるのに、ヤクザに憧れて次郎長一家に入ろうとしたが、あえなく門前払い。次郎長親分に諭される。第五部で晴れて次郎長一家入りするも、あっさりと殺されてしまう。原作では荒神山まで活躍するキャラクターで第五部、第六部では大活躍の予定で明日からクランクインという時期に東宝から来たのが「ブタマツコロセ」の電報。加東大介黒澤明の「七人の侍」にキャスティングされたので、早く終わらせて身をこっちによこせ、と。マキノは大変怒ったらしい。が、黒澤明の才能を知っていたマキノは、義弟(加東は雅弘の姉の旦那であった澤村国太郎の弟)の今後のキャリアのためには「七人の侍」に出た方がよかろうと受諾。「ブタマツゴロシ アナタノゴキボウニヨリヤッテミマス コロシヤマキ」と返信して殺してしまった。次郎長一家の死亡第一号となった豚松だが、「石松開眼」でも豚松の葬儀が行われて豚松の母親と婚約者が出てきたりと実は死んでからの方が活躍が多かったりするのだ。

 豚松は難しい。まず。。デブでなきゃならないのだ。(豚松やもんな。。)しかも陽気で不快感のないデブでなきゃならない。実はとても難しい。アメリカなら、最近亡くなったクリス・ペンフィリップ・シーモア・ホフマンがいるのだが、日本では思いつかん。加東大介にしても別にデブじゃないですからね、丸顔なだけで谷啓フランキー堺も別にデブじゃないけど、丸顔なんでなんとなくデブっぽい印象がある。そういう意味では日本でデブ俳優って田口浩正伊集院光しかいねえのか。デブは。。やっぱりピザでも食ってろ、とか言いたくなるしなー。でも田口さんも伊集院も豚松じゃねえよな。ということで、ここはベタですが、「間宮兄弟」で貴重なデブかわいい、キャラとして見事に定着を果たした塚地武雅を推薦いたします。二番手は荒川良々で、単なる脇役でいいんなら佐藤佐吉でにええでしょ。

お蝶

オリジナルでは若山セツ子。小顔でめっちゃ可愛い。博徒の女房らしくないところが本シリーズの面白いところだろう。第六部で病没してしまうはかなさもぞっとするほど色気がある。日本映画を愛する人ならば、この役はどなたか、予想がつきますね。年をとってもこの可愛らしさ!原田知世しかございません。もうちっと若くするなら、小顔の可愛らしさで星野真理真木よう子

投げ節お仲

オリジナルでは久慈あさみ正直、本作を見るまで久慈あさみがこんなに色っぽいとは思わなかった。やせぎすのスラリとした、もう色気がポタポタこぼれてるような色っぽさ。そして悪女でございます。女だてらに壷を振る、まさに賭場の華。熱が入ってくると着物を片脱ぎ、ほっそりとした二の腕に惚れ惚れしてしまう男を尻目にイカサマ仕込む女壷振り。流し目ができる、うっとりするほど綺麗な女優さんがよろしいな。俺は麻生久美子さんがいいと思います。大人の色気が欲しければ、洞口依子さんでございましょう!あとは。。水野美紀もいいな。

お園

オリジナルでは越路吹雪。第六部から登場。もう絶品である。出かけたまま、帰ってこない旦那の身を案じて庭先の権現様にお参り。烏が鳴けば、「バカだって笑ってやがる。賢ければ、神頼みなんかするもんかい」と一人ごちる。一人、酒飲む姿も粋で「ざまあみろ また一杯減らしてやったぞ」と言い捨てる。台詞回しが独特で映画を自分の空気に染め上げてしまうこの雰囲気、役者は演技の上手下手も大事だが、まずはその立ち姿、存在感である越路吹雪のお園を見てしみじみそう思った。旦那を井戸端に呼び出して、「おまえ、勘平さんになるんだよ あたいがお軽」(この意味も現在ではわからんだろうなあ。。)と微笑む可愛らしさ、男が勝手に思う理想の女性像なんだが、ため息が出ましたよ、あたしは。そもそも本シリーズをリメイクしてくんないかな、と思ったのはこのお園を南果歩がやれば、どんな感じになるのかなと。他に面長なところが似てるってのもあるが、槍を片手に酒をくいとあおる姿が様になりそうなりょうもいい。全然違うイメージならば、田畑智子。意外にこういう役が似合いそうだ。

夕顔
オリジナルでは川合玉江。新人女優でこの一本だけで女優を辞めてしまったらしいが、なかなかいい女である。台詞回しはひでえが。マキノ雅弘は夕顔には「瞳のうるんだ」女優、笑っていても泣いているような顔した女優がいいと思っており、宝塚から東宝に入社した有馬稲子を考えていたらしい。が、東宝曰く「宝塚出身の女優は処女として扱ってもらいます!女郎の役などもってのほか!」。仕方なく、新人女優から選んだのが彼女だった。演技は何もできないので、イチから演技指導。なんでもできた監督だったが、女優を育てるのもうまかった。後に東映で俊藤プロデューサーの娘を預かる。これが後の藤純子である。馬鹿な石松の嫁になってやろう、丸髷に結ってやろうという、気持ちのいい女である。おいしい役柄だと思うが、難しい。若手でそこそこ演技できる人で、顔立ちがあまり派手でない女優さんということで、泣き顔の霧島れいか、薄幸の女の子やらせたら完璧な前田綾花。泣き顔の寺島しのぶもマキノつながりでありか、とは思うがちとタッパがありすぎるか。

身受山の鎌太郎

オリジナルでは志村喬。第八部に登場する大親分で石松のために女郎の夕顔を身請けしてくる親分さん。大親分なのに、気さくな人柄で子分からも慕われている。シリーズの中でほぼ唯一の年寄り役でここはマキノゆかりの人。シリーズに出演した長門裕之でも監督兼任で津川雅彦でもいいだろうが、マキノ雅弘の親友だった岸部徳之助の息子である岸部一徳が一番いいだろう。

以上で終わります。こう思いつくと今の日本映画ってキャストについてはコマがそろってきたので、どんな映画でもリメイクできると思う。問題は。。次郎長で映画を作ろうと思う、バカなプロデューサーがいるかだよな。観客に媚びるみたいな映画ばっか作って勝ちを拾ってもしょうがあるめえ。どいつもこいつも韓国映画のパクリやんけ。そんなん、何がおもろいねん。マーケティング、お呼びでないの。金儲けしたい人は株でも買っとけ。面白い映画作ったら、口コミで客入るんだから。観客はそんなにバカじゃねえぞ。調子いいように見えても実質、死に体の時代劇。山田洋次是枝裕和ももう時代劇は撮らんぞ。どこかに新風を吹き込もうと思う才人はいないもんかね。とりあえず、中島貞夫頑張れ