内藤昭、死去

大魔神


 大映美術監督だった内藤昭が亡くなった。享年79歳。数年前、元大映野村惠一(近年、「二人日和」を監督した)が新聞に内藤氏の病気について書いていたのを見ていたので、病気のことは知っていたが、亡くなるとやはりさびしい。

 なぜかわからないが、美術監督には長生きが多い。木村威夫(1918年生まれ)、西岡善信(1922年生まれ)、新藤兼人(1912年生まれ)も若い頃は溝口健二の下で美術をやっていた。(最新作の「ふくろう」でも美術を兼ねている)79歳も随分年寄りだが、なんだかこの面々に比べると若死にに思える。しかも彼らが恐ろしいのは、この年になっても現役バリバリなところだろう。新藤兼人も一時期、体調を崩していたが新藤兼人賞の講評やってるからまだまだ元気でもう一本ぐらい撮りそうだ。話題がずれてしまったが、内藤氏の病気は相当重かったらしく、晩年はほとんど寝たきりで口も聞けなくなっていたらしい。

 1951年大映入社。「新・平家物語」などでの美術助手を経て、美術監督に昇進。水谷浩、西岡善信らと共に大映全盛時代を支える。有名な作品を拾うと「悪名」「座頭市物語」「忍びの者」「眠狂四郎殺法帖 」「兵隊やくざ 強奪」と大映の有名なシリーズ作のほとんど。すげえ。時代劇から現代劇と幅広い。出色なのは、大映を代表する特撮「大魔人」シリーズであろう。時代劇を題材に壮大な特撮ものでシンプルなストーリーなのに、今見ても十分に面白い。

 日本映画の旧作を集中的に見るようになって思うのは、大映の60年代の作品が圧倒的に面白い。しかしこれだけ質のいい映画を作ってて、なぜ大映はつぶれたのか。山本薩夫増村保造、三隅研二、森一生田中徳三とキラ星のような監督陣に加えて、名カメラマンの宮川一夫森田富士郎、そして内藤昭や西岡善信といった美術の至宝とスタッフは抜群であった。市川雷蔵の急死や永田雅一の悪政と理由は様々であるが、彼らスタッフが優秀であることはその後の彼らの活躍を見ても十分にわかる。

 大映倒産後は三隅研二、西岡善信ら共に映像京都に参加。フリーで様々な作品に参加した。勝プロの「子連れ狼」シリーズ、小栗康平の「泥の河」、東映ヤクザ映画、深作欣二の「華の乱」黒木和雄とも「TOMORROW 明日」「浪人街」で美術を担当している。長く活躍した映画人であった。合掌。大映を知る映画人がまた一人世を去った。西岡さん、田中徳三監督、長生きされてください。合掌。

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