佐賀のがばいばあちゃん 

佐賀のがばいばあちゃん 6/17 MOVIX京都シアター12
★★★★
→評判もいいし、よくお客さんが入っているようだったので、期待して見に行ったが、期待通りによい作品であった。昭和を描いた作品ですがノスタルジーを排し、時代性をぼやかしたところがよかったと思う。丁寧に貧乏だけど明るく生きる祖母と少年のドラマをきっちりと描いているところに好感が持てる。母親の元から離れ、ばあちゃんの家に預けられた明広と貧乏を明るく生きようとしているがばい(佐賀弁ですごいの意)ばあちゃんのエピソードが中心となっている。脚本の作り方がうまいと思ったのは。全編を通じて、明広の母への思いを描いているところだ。根っこにきっちりとしたテーマがあるので、ドラマがばらけずにまとまっており、登場人物を絞ってシンプルで味わい深いドラマに仕上がっている。

 舞台になったがばいばあちゃんの家が素晴らしい。家の中に川があって真ん中に橋がかかっている。パンフによると佐賀県内をロケハンしまくって、そんな家を実際に見つけたらしい。この情熱だけでも頭が下がる。家の中はセットだが、ばあちゃんがくず鉄ぶら下げて帰って来る橋や駅、ばあちゃんが働いているお屋敷、線路も全部ロケ。最近は昭和のレトロ感をCGで再現させてしまう志の低い映画が大流行であるが、(どの作品とは言わん)本物の町並みにはやっぱり人が生活している匂いがある。そうした匂いが映画に説得力をつけている。佐賀県にはまだまだ古い町並みが残っているのだ。

 キャストでは何と言っても吉行和子が素晴らしい。「この胸いっぱいの愛を」の演技も素晴らしかったが、本作でも貧乏を明るく生きる強いお婆さんを熱演している。大阪では節約を始末と言う。始末と吝嗇は違うのである。明広が怪我したときに医者から治療費はいいと言われてもきっちりと払ったように、明広が野球部のキャプテンになった時にお祝いに一番高いスパイクを買ってあげたように、使うべきはきっちり使うばあちゃんなのだ。無駄な金を使わずに工夫して貧乏を楽しく生きる。貧乏なんてものは苦痛でしかないし、また情けないもんなんだが、心根まで貧しくなっちゃいけない。がばいばあちゃんの言葉は言い回しが独特で笑ってしまうのだが、かなりいいことを言っているのだ。特に「悲しい話は夜するな。どんなにつらい話も昼したら、大したことない」には思わずうなってしまった。吉行さんの柔らかい台詞回しで聞かされると、説教臭くなく、自然にそう思えてくる。キャスティングの成功だと思う。

 母親役には工藤夕貴工藤夕貴はいい具合に年をとって役柄が広げてますね。今後も楽しみ。山本太郎の先生役も絶品でちょっとくどいようなシーンでもサラリとこなしてしまう。明広と一緒にワンワン泣きながら自転車で走るシーンはこの人しかできんだろう。

 三宅裕司は成長した明広を演じていたが、演技はともかく、その役柄がドラマ上にはあんまりいらなかったような。。幻になって少年時代の明広と出会うシーンがあるのだが、普通は現代が成長した明広なんだから、少年時代の明広が幻だろ。これはいらんかったと思うが、明広=島田洋七というイメージを消すためにわざとやったのなら、まあわかる。が、ちと弱い。

 粘っこく撮れば、もっと泣き所が増えた映画になったと思うがくどくなくさらりと仕上げたのがよかった。最後の歌は少し余計だと思うが。子役の演技もくどくなくてよい。とにかく最近の日本映画は泣かせたら勝ちだと思ってる志の低い世界なので、すっきり仕上げた本作は心地よい。

佐賀のがばいばあちゃん (徳間文庫)

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がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい! (徳間文庫)

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がばいばあちゃんの幸せのトランク (徳間文庫)

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がばいばあちゃん 佐賀から広島へ めざせ甲子園

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