久世光彦演出「センセイの鞄」を見た

3月12日。雨天のため、外出する意欲起こらずに自宅にて閉門蟄居。WOWOWにて久世光彦の「センセイの鞄」を見る。WOWOWのドラマはなるべく見るようにしているので、これも見たと思うのだが前半しか覚えてなかった。柄本明演じる初老の先生と小泉今日子演じる40前の教え子とのほのかなラブストーリーである。淡々として地味なドラマであるが、じりじりとストーリーが進み、徐々に展開を追うのが楽しみになっていく。久世光彦が語るように本作は「37歳の女と70歳近い男がまともに恋をするという、ある意味でサスペンスのような大恋愛もの」であり、描き方によっては生臭い作品になったとも思う。淡々としながらも徐々に空気にピリピリしたものを入れていく手法はうまいと思った。ラストで恋愛に不可欠なセックスをきっちりと描いているところに好感が持てた。先生と同世代の久世さんからもこの問題は描きたい題材であったのだと思う。この部分は無くてもストーリーに支障はないと思うが、このシーンでドラマにリアリティが加えられた。

 柄本明は主演から脇役、渋い役柄から悪役からコメディリリーフで何でもござれの俳優である。最近、出番がつとに増えた。「容疑者 室井慎次」の肩の力が抜けきった老弁護士役が印象に残っているが、本作では「男はつらいよ」シリーズで博の父役を演じた志村喬のような雰囲気で何もかも飲み込んだ老先生を演じている。小泉今日子も40歳前の女のやるせなさとたくましさとそしてかわいらしさを内包した演技でよかった。先生が風邪だと聞いて大急ぎで先生の家を訪ねるシーンがよかった。少し甘えたように「センセイ」と呼ぶ声が耳に残る。

 小泉今日子に粉をかけてくる同級生に豊原功補、脇見運転の癖がある飲み屋の亭主にモト冬樹、同僚の柄本明に密かな恋心を抱いていた石野先生に木内みどり、飲み屋の常連の坊さんに竹中直人柄本明の元女房だった樹木希林が出演。木内みどりは本当に久しぶりに見た。「サヨナラCOLOR」で竹中直人久世光彦に演じさせた役柄(原田知世の初恋の相手だった先生役)が、このドラマの設定だったことに今更気づいた。

 久世光彦の葬式を見たが、参列者一同が皆悲しんでいる様子が一目でわかる、重苦しい葬式であった。特に森繁久彌の落胆振りが痛々しかった。長生きするということはそれだけの人の死に目に出会う。長生きもなかなかにつらい。重ねてご冥福をお祈りしたい。

参列者名簿を見ていると氏神一番の名前があってびっくりした。活動してはるんですね。

センセイの鞄 [DVD]

センセイの鞄 [DVD]

センセイの鞄 (文春文庫)

センセイの鞄 (文春文庫)

人気blogランキングに登録しました。クリックしていただくと激しく喜びます。