にっぽんぱらだいす 1964年 松竹大船

☆にっぽんぱらだいす 1/20 高槻松竹セントラル(女性映画傑作選10)
★★★★★
→松竹喜劇の旗手、前田陽一のデビュー作にして代表作。見るのは二回目だが、文句なしに面白い。終戦直後から赤線が廃止される昭和33年3月31日までの赤線が舞台になったコメディである。主演となるとやはり香山美子になるのだろうが、主人公はこの赤線そのものであろう。赤線で働く娼婦と経営者の群像劇である。この作品が前田監督のオリジナルというのもすごい。

 どこまでもたくましく、わがままに騒がしく生きる娼婦が生き生きとテンポよく描き出されていて、心地よく見てられる。俳優では益田喜頓がすごい。田舎の木こりから戦後のドサクサで大金持ちになって香山美子を抱く。彼女を「観音様」と拝み、自分を「かぶとむし」だとつぶやく。年老いてもなお、若い女性を求める醜さ、その老醜さをたっぷり漂わせながらの演技が見事である。親父の後を引き継いで赤線を引き受ける長門裕之のたぬきっぷりも見事。山本直純の軽快なテンポのテーマ曲も映画を盛り上げている。

長めの感想もあります。