☆喜劇・女は男のふるさとヨ
☆喜劇・女は男のふるさとヨ 2/13 第七藝術劇場(森崎東監督ベストセレクション)
★★★
→森崎東監督の代表作シリーズである新宿芸能社シリーズ<<女>>シリーズの第一作。1971年という日本映画がすごい勢いで崩れていく中でこうした喜劇シリーズが作られる余裕があったんですなあ。森崎東にとっての不幸はデビューが1969年という邦画が斜陽になった時代であったことだと思う。それでもこの人は割りと撮った方で山田洋次に続く二番手として活躍し、松竹を支えた。森崎東の喜劇はテンポも早く、笑い所がポンポンと出てきて楽しい映画になっているのだが、映画のあちこちにチクリと観客の胸を刺す毒が入っている。「おまえ、こんな映画で笑ってていいのか。現実だぞ。」とキリキリと身をつきさす毒である。たとえるなら炭酸飲料で爽快感があってのどごしもいいんだが、のどがちくちくする。そのちくちくが快感になってくりゃ、しめたもんです。本作はストリッパーを主役に下町のドタバタ喜劇を描いた映画で主演は倍賞美津子。この人の若い頃ってこんなに綺麗だったのか、とびっくりした。姉さん(倍賞千恵子)とはまったくタイプが違うが健康的できびきびしている様がとってもまぶしい。彼女と対照的なキャラクターとして純情で不器用なストリッパーを演じたのが緑魔子。石橋蓮司夫人ですな。増村保造の「盲獣」をはじめとして妖艶な美女な役柄が多かった彼女をコメディリリーフに使ってしまうというキャスティングがすごい。森崎監督は緑魔子がトイレで水をぶっかけられるシーンを超クローズアップで撮れたことがとても嬉しかったらしく、映画監督になってよかったと思ったそうです。。。よくわからない。倍賞美津子に付きまとう河原崎長一郎も貧乏臭い感じがよく出ていた。必要以上に糞が出ているのが少し気になるが、まあ面白い作品です。森繁久彌が社長役で出演。あんまり出番が多くないが、いい人なんだなと思わせる、のんびりとした演技を見せてくれます。当時の森繁は舞台、テレビ、映画と多忙であり、何もこんなの出なくても。。と思ってしまう。小林信彦の「おかしな男 渥美清」に、森繁が森崎監督のことを「才人ですね」と褒めるシーンがあるし、森崎監督も「森繁さんに出会えたのは幸せであった」と語っているところからみても二人の相性はよかったようです。
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