父、帰る

父、帰る 1/15 みなみ会館
★★★
→2003年のヴェネチア国際映画祭でグランプリを受賞したロシアの映画。母親、祖母、息子2人でひっそりと暮らしていた家庭に蒸発していた父親が12年ぶりにひょっこり帰ってきたところから始まり、父親が二人の息子を連れて旅に出かけるというこじんまりとした映画です。地味な映画なんですが展開が読めない。父親は無口な男で兄弟に何の説明もせずに車を運転し続ける。子供にしてみれば、なぜいきなり父親が現れたのかわからない。そもそもこの男は父親なのか。”父親”は一体、何を考えているのか、わからない。なぜ蒸発していたのか。子供の思いは観客の思いに重なり、観客はこの男の存在に引きづられ、映画に引き込まれていく。この父親がビリー・ボブ・ソーントンに似てて、少し怖い。ひょっとして子供を湖かなんかに棄てるんではないか、ともはじめは思った。(考えすぎ)一瞬、ビリーが本当に出てるのかと思ったがロシアの俳優さんである。不器用ながら12年間の時を埋めるように子供に近づこうとする父親に対して兄は少しずつ心を開いていくが、今年12歳になる、父の顔を一度も見たことがない弟は父を拒絶する。一体、どうなるのかと観客をドキドキさせながら映画は終盤に向かい、予想もしない事件が起こる。いささか寓話的な感じでその予想もつかないラストを迎えてため息をついてしまった。なお、映画撮影後に兄を演じていた少年(佐藤慶に似ている)がロケ地の湖にて不慮の事故で溺死するという痛ましい事件も起こっている。

父、帰る [DVD]

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