いつか読書する日

いつか読書する日 9/17 OS劇場C・A・P
★★★★★
→「独立少年合唱隊」の緒方明の最新作。映画芸術411によると映画が完成してからなかなか上映する映画館が決まらなかったらしい。いい映画なんだけど。。と褒めてくれるが上映してくれる映画館がなかった。関西でも事情は同じでミニシアターの館主を集めての上映会でも「地味すぎる」という意見が大半だったらしい。結局は梅田駅から最も近いミニシアターなOS劇場C・A・Pでモーニングショーの上映であった。久しぶりに映画を見て長いため息をついてしまった。小さな田舎町で繰り広げられるメロドラマである。地味な映画ではあるが、人間の心の動き、情感を見事に織り込んで説得力のあるドラマに仕上がっている。派手さを排し、心の動きを鮮やかに描き出すことでこれほどのドラマを描き出すのだ。映画の奥深さを改めて感じさせる作品であった。二人の持つ過去にこだわることなく、映画はあくまでもドラマを日常の延長として描きだしているところに好感が持てた。二人の関係を「カイタ!」の一言で表してしまう鮮やかさはぞくぞくするほどであった。彩りとしてアルツハイマーにかかった旦那を抱える老婦人の物語と児童相談所に保護される子供の物語を添えて時代性の風も吹き込ませている。何より主演の田中裕子が素晴らしい。つまらないのに違いない日常を淡々とどこか楽しげに生きながらもふっとしたところで寂しさを感じさせる演技に惚れ惚れした。長崎の早朝を舞台に「よし」と小さくつぶやいて牛乳を背負って階段をのぼっていく姿もいい。夜から朝になろうとしているわずかな時間をうまく写している。笠松則通の撮影もよい仕事だ。飄々としながらもどこか影を背負った岸部一徳の存在感も際立っている。初日の岸部一徳緒方明監督の舞台挨拶を見てきたのですが大入り満員の立ち見続出状態で驚いた。しかしもっと驚くのは初日から連続12日間も満席状態の大ヒットになったこと。日本映画で平日のモーニングショーでこんなことはなかったと思う。OS劇場の記録を塗り替えて日に二回上映でロングランが決定している。まだまだ映画ファンも棄てたもんじゃないですね。

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