☆台所太平記 6/28 シネ・ヌーヴォ(映画監督豊田四郎生誕100年)
☆台所太平記 6/28 シネ・ヌーヴォ(映画監督豊田四郎生誕100年)
★★★
→大阪の価値観というのは商都=実益が全て、という感じがしますが、井原西鶴の小説に見えるように男の放蕩を美学という風に描く風潮もあります。放蕩癖の若旦那が勘当されるというのは当時からよくある話でして、そこには商売の町としての厳しい規則があるわけです。織田作之助がダメ男に放浪への羨望を重ねて見事に描いたのが「夫婦善哉」をはじめとする作品群ですが、同じように「猫と庄造と二人のをんな」のように大阪のダメ男を主人公にした谷崎潤一郎は非関西人であったからか、これに愛情と羨望を加えて書いていた。本作は谷崎が後半生を振り返って書いた自伝で森繁久彌演じる主人公は彼自身である。豊田監督は本作をお手伝いさんを中心にしたエピソードを中心にした女優の顔見世映画にしている。森光子、乙羽信子、京塚昌子、淡路恵子、水谷良重、団令子、大空真弓、池内淳子、中尾ミエと東宝の女優がずらりの賑やかな映画になっています。森光子にフラれてしまう山茶花究のテレ具合もとってもおかしい。山茶花究は森繁との共演が多く、後に森繁は自分が作った森繁劇団にも客演者として迎えています。森繁の面白さはアドリブで座をかき回して、出演者のテンポを崩してしまうところにありましたが、山茶花究は一切動じずに自分のテンポで芝居を続けたとか。それがまた個性的で楽しかったのだ。昔はこういう脇役が多かった。
- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1974/04/10
- メディア: 文庫
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