松村達雄死去

　最近見ないなと思っていたら近況を知ったのが訃報の記事であった。結構、好きな俳優であっただけに悲しい。90歳という歳なので年に不足はないだろうが。。経歴を見て思ったのは芸能活動の長さに比べると映画出演作品が案外少ないな、と。

　松村達雄は東京出身。父親はコロムビアレコードの重役であった。戦後復員してから、昭和27年、小劇団を旗揚げ。舞台を中心にドラマ、映画へ出演していた。所謂、専属俳優ではなかったのだろう。東宝と松竹の出演が多い。「男はつらいよ」シリーズで森川信のあとに二代目おいちゃんとなるが、本人はおいちゃん役が厭だったらしい。おいちゃん役はすぐに下條正巳にバトンタッチしている。江戸前で歯切れのいい啖呵がポンポン切れる森川信に比べて、のんびりとした台詞回しで飄々ととぼけたおかしみが持ち味のボケキャラの松村達雄ではイメージが違いすぎた。降板後もいろんな役で「男はつらいよ」に出演してる。

代表作はやはり黒澤明の遺作となった「まあだだよ」になるのだろうか。善人ばかり出てくるぬるいストーリーだが、仁徳を感じさせる松村達雄の演技には心が温かくなった。「疑惑」では岩下志麻の先輩弁護士役、「台所太平記」では京塚昌子のペンフレンド役、「長崎ぶらぶら節」の粋な旦那役とか出てくるだけで画面に温かみが出るような演技も素敵だったが一番好きなのは「国会へ行こう！」の守旧派の大ボス役。眉一つ動かさない、貫禄たっぷりな演技には惚れ惚れした。彼がいなくなるのか。。さびしくなるなあ。。合掌

まあだだよ デラックス版 [DVD]

国会へ行こう! [DVD]