火火 5/5 第七藝術劇場

火火
5/5 第七藝術劇場
★★★★★
→結局、連休中に見たのはこの映画だけなんだよな。高橋伴明が、実在する女性陶芸家の神山清子を描いた伝記映画で実にすばらしい映画であった。陶芸家として信楽焼きに新風を吹き込む女性陶芸家としての生き方と二児の母としての生き方を見事に描いている。母の背中を追い、陶芸家への道を歩みだした息子が白血病を発病し、母は骨髄バンク運動を始めとして息子のために尽力する。しかし、そこを従来の難病物には決して描いていないのだ。病気で弱音を吐く息子に「戦わんうちにあきらめるんか、おまえなんか死んでしまえ」と怒鳴り、「これは家族の戦いや。あんたには関係ない」と息子の彼女を別れさせてしまう母の姿がそこにある。その姿はまるで炎の中で眉一つ動かずにたたずむ不動明王のようであった。本当に強い人間は泣く余裕すらも持たずに前に向かって進み始める、あくまでも淡々とだ。人間は本来、こんなに強いものなのだ。捨てたもんじゃない。そんな気にもなった。主演は田中裕子。田中裕子は演技は折り紙つきだが、少しオーバーアクションのきらいがあったのであんまり好きでなかった。が、ここではいつもの演技を見事に棄て去り、自然体で火をじっとみつめるしぐさなんて引き込まれてしまった。息子役で映画初出演の窪塚俊介も体当たりでしんどい役を演じてて、俳優にかける情熱を感じさせてくれた。久しぶりに本当にいい映画を見た、その思いで胸がいっぱいになった。