深作まつり第四拾七夜「ギャング同盟」〜わたし、死ぬのが怖くなったの〜

久々の深作まつりは初期作品の「ギャング同盟」。1963年の作品です。「白昼の無頼漢」「ギャング対Gメン」に引き続いて撮られたギャング映画です。主演は日活からフリーになって初主演となる内田良平東映の作品なんですが大島作品の常連である戸浦六宏佐藤慶の出演が従来の東映作品と違う彩を添えています。

仲間と共に戦後の闇市で暴れまわった風間(内田良平)が出所してきた。かつての焼け跡は綺麗に整地され、ビルが立ち並んでいた。彼の縄張りも大暴力団の縄張りになっていた。彼はかつての仲間、相棒の高木(佐藤慶)、貧乏暮らしをしていた楠(山本麟一)と柾江(楠侑子)の夫婦、血気盛んな坊や(曽根晴美)、そして大暴力団の事務局長をやっていた尾形(戸浦六宏)を引き込んで暴力団の組長(薄田研二)の誘拐事件を立てた。キレ者の幹部、宮島(平幹二朗)の目を盗んで尾形の策謀で組長とその娘、秋子(三田佳子)の誘拐に成功する。大金を組織に要求するが、彼らが送ってきたのは殺し屋であった。かつての流しの仲間、ジョージ(アイ・ジョージ)の手助けを得て何とか逃げる風間と高木であったが、ヤクザは彼らの隠れ家に向けて出発していた。。

 どこか雰囲気がカラリと明るかった「ギャング対Gメン」(の割には死人続出のハードな話ですが)に比べると全編ハードボイルドに満ちて、じっくり見れる作品になっています。筋立ては単純明快なのですが、次の展開が読めない楽しみがあります。ラストは派手な撃ち合いになるんですが、それまでの展開が大変にドキドキさせてくれる。

事務局長の尾形は事務局長で内部から手引きしておるのですが、彼と宮島のやり取りも面白かった。小心者だけどどこかずるくて仲間の中で少し浮いてる曲者ぶりを戸浦六宏が楽しげに演じています。佐藤慶は徹底的にクールで仲間であろうとも切り捨ててしまう参謀を好演。役柄がぴったりやわ。三田佳子のつんとした感じもかわいい。

 深作監督がこの作品で考えていたのはギャングの日常性をどう描いていくか、でした。当時、東宝でも日活でもギャング映画はありましたが、無国籍な雰囲気(どこの国かよくわからんが日本じゃないだろう、という感じ)でリアルさにかけていました。だって日本にはギャングはいないわけですから当たり前と言えばまあそうなわけです。その既成のヤクザに当てはまらないギャングを深作監督は戦後の闇市で生き生きと暴れまわっていた風間に重ね合わせています。無秩序な焼け跡への憧憬は深作作品に幾度も出てくるキーワードで、この映画でも風間が焼け跡を懐かしく思って、誘拐を思いついています。。世間を縦横無尽に走り回り、どこまでも前向きで楽観的に生き抜いていく風間のキャラクターはもっとあくが強いキャラクターとなって後の「現代やくざ 人斬り与太」に「仁義なき戦い 広島死闘編」の大友勝利につながっていきます

主演は「十三人の刺客」や「青春の殺人者」の内田良平。大ヒット曲の「ハチのムサシは死んだのさ」(72年 平田隆夫とセルスターズ)の作詞家としても知られます。深作作品では「日本暴力団 組長」で大組織の幹部を演じていますが大組織とかつての友人への情にはさまれて苦悩する幹部を熱演しています。深作の仁侠映画は敵役の方が人間くさくて感情移入しやすい。とってもかっこいいんですが、コミカルな役もできる人で本当にいい役者さんでしたが早くに亡くなりました。深作作品への出演が少ないのも残念。「青春の殺人者」の父親役もよかった。

後に仁侠映画で大活躍する俊藤浩滋プロデューサーがノンクレッジットながら加わっています。俊藤さんが東映に関係するようになったのは東映フライヤーズの関係からで後にアイ・ジョージの企画で東映に出入りするようになったからだそうです。人気歌手だったアイ・ジョージが出演しているのは、そのせい。歌の披露だけでなくて銃撃シーンも披露。

ジャズにのせて軽やかに始まるかっこいいオープニングからテンポよく、映画は進んでいきます。ラストの激しい銃撃シーンは圧巻。仲間が一人一人欠けていく中で妙に元気な風間と坊やの奮闘振りが気持ちいい。モノクロが銃撃シーンの迫力を増すのに効果的でギャング映画らしい雰囲気が出ていました。

監督:深作欣二 脚本:秋元隆太、佐治乾、深作欣二 撮影:山沢義一 美術:中村修一郎
出演:内田良平佐藤慶、山本麟一、戸浦六宏、楠侑子、曽根晴美アイ・ジョージ平幹二朗八名信夫、薄田研二、沢彰謙、三田佳子

深作欣二 ラスト・メッセージ

深作欣二 ラスト・メッセージ