Jam Films S〜玉石石石玉混合のショートフィルム集〜

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 今日、紹介するのは「Jam Films S」。少し前にプチブレイクしたショートフィルムのJAMシリーズ完結作です。2002年に岩井俊二とか望月六郎や7人の監督でやったショートフィルムの「Jam Films」の続編で7人の監督がそれぞれ選んだ監督さんが作品を撮っています。ちょうど同じ頃に「刑事まつり」というのがあってショートフィルムが一時期、流行してましたな。「刑事まつり」も大入り満員だったしね。「Jam Films」も割りとヒットしてました。ただ、ブームはすぐに終わりましたが、(続編はいずれも不発)下北沢に短編映画館トリウッドというのもありますし、(やっぱり東京だな、こういうのは)自主制作を中心にショートフィルムには根強い人気があります。

 漫画でも長編より四コマが難しいように短い時間に映画の世界観と自分の思いをぶつけるというのは難しいでしょう。「Jam Films S」では7本のショートフィルムが紹介されていますが、玉石混合。世界観を出すのに成功してる作品と中途半端に世界観を広げすぎて失敗してる作品があります。

 この中では前者は「HEAVEN SENT」「すべり台」「スーツ」で後者は「Tuesday」「ブラウス」「NEW HORIZON」「α」。一番よかったのは阿部雄一の撮った「すべり台」です。

 明日に転校を控えた小学六年生の夏美(石原さとみ)は公園で幼馴染の且人(柄本時生)を待っていた。やってきた且人に夏美は「何でも一つだけ言うことを聞く」と切り出す。実は7年前、夏美はいたずらですべり台から且人を突き落として大怪我を負わせてしまったのだ。その償いの思いから出た言葉であった。そんな事情などすっかり忘れている且人は簡単に「じゃあやらせて エッチ」と答える。戸惑う夏美だったが(当たり前)約束は約束。やるところを探して公園をうろうろする二人をこっそりとつける不審な男。(山崎まさよし)雰囲気作りが大切だとぎこちない会話をする二人。じれったくなった且人はいっせいのーで服を脱ぐことを提案するが。。。

 撮影当初、石原さとみは高二ですが恐ろしいほど違和感ないです。「てるてる家族」で見せたコメディエンヌがよく発揮されて、ちょっと変わった小学生の女の子を好演しています。「ごめんね」と言いながらタイヤを蹴っ飛ばすところとか、「おすしー!!」と言いながら走っていくシーンが微笑ましい。まあかわいい子は何やっても似合うということで。且人をやったのは柄本明の次男の柄本時生。兄さんは「美しい夏 キリシマ」の柄本祐(たすく)ですが父親には時生君の方が似ている。。というか変な演技する時の柄本明に似すぎてびっくりした。キャスティングの条件が「もてない」「ハンサムでない」「素直でない」だったらしく、どっから見ても三枚目の彼が抜擢されたとか。。本人、嬉しくないだろう。。。その後、WOWOWドラマの「4 TEEN」などでキャリアを重ねています。

 何気ない少年少女の日常を切り取って、丁寧に作られています。撮影は「丹下左膳 百万両の壺」の津田真澄。落ち着いたカメラワークで神社や公園で走り回る少年少女をロングで撮っています。変な映像効果を使うこともなく、しゃれっ気を出すことも無く淡々と撮っているところに好感が持てます。監督の阿部雄一篠原哲雄の助監督を「月とキャベツ」の頃からやっており、「SDガンダムフォース」「ウルトラマンネクサス」の監督としても有名です。

他の作品は簡単に紹介しときます。

Tuesday
推薦者は堤幸彦で監督は「凶気の桜」の園田賢次。堤の作品らしい雰囲気が出てて俺は堤も主演のZEEBRAも「凶気の桜」も大嫌いなのでちっとも面白くなかった。ちなみに俺が「Jam Films」を見なかった理由は堤幸彦が監督として入っていたからです。

HEAVEN SENT
北村龍平の助監督を長く勤めている高津隆一の作品。舞台をビルの屋上に設定し、登場人物も乙葉遠藤憲一に絞り込んで独特の世界観を作っている。ただ、血が出すぎだと思う。

ブラウス
望月六郎の原案をピンク映画やVシネで活躍している石川均が映画化。中年のクリーニング屋の悲しみをうまく描いているが、小雪ってなんかエロさを感じないんだよな。30歳を超えて少し崩れた感じの女優がやってたらもっと感じ出てたと思うんだが。大杉漣が実にいい雰囲気だっただけに少し残念。

NEW HORIZON
浜崎あゆみが出てたミスタードーナツのCMを撮った手島領が監督。行定勲と一緒に脚本も書いています。綾瀬はるか以外は外人キャストで日本映画らしくない雰囲気が出てますが、綾瀬はるかのエロさ以外は特筆すべきところはなし。彼女のファンは見るべし。

α
監督の原田大三郎岩井俊二のお弟子さん。原田大二郎の親族かどうかは知らぬ。内山理名は綺麗な顔をしてるのだが、全然色っぽくないのだ。映像をいじってるだけでつまらん。

スーツ
飯田譲治の脚本を映画化したのは「ekiden 駅伝」の浜本正機。突然、英雄になってしまった男をめぐるドタバタ劇が楽しい。人を食った感じのキャバクラ嬢小西真奈美とさわがしいリポーターの濱田マリがいい。



まあ豪華キャストですので、見ても損は無いと思います。ただショートフィルムというのはもうひとつ食いでがないわあ。

プロデュース:河合信哉 オープニングCGアニメーション監督:原田大三郎

Tuesday
監督・脚本:園田賢次 音楽:ZEEBRA
キャスト:ZEEBRA、金井勇太岩堀せり

HEAVEN SENT
監督・脚本:高津隆一
キャスト:乙葉遠藤憲一

ブラウス
監督:石川均 原案:望月六
キャスト:大杉漣小雪

NEW HORIZON
監督・脚本・原案:手島領 脚本:行定勲
キャスト:綾瀬はるか

すべり台
監督・原案:阿部雄一 脚本:元優 撮影:津田真澄
キャスト:石原さとみ柄本時生山崎まさよし

α
監督:原田大三郎 音楽:スネオヘアー
キャスト:内山理名スネオヘアー

スーツ
監督・原案:浜本正機 脚本:飯田譲治
キャスト:藤木直人小西真奈美濱田マリ三津谷葉子