父と暮せば

父と暮せば 2/8 京都シネマ
★★★★★
黒木和雄も1年か2年のペースで映画を作れるようになったのだねえ。この人は岩波映画でドキュメンタリーを撮ってた人で後に独立プロで映画を作り続けた。お金集めがかなり大変で、90年の「浪人街」から2000年の「スリ」まで10年も映画が撮れなかった。それが2002年に「美しい夏 キリシマ」を撮ってその2年後に本作を発表して、そして新作「紙屋悦子の青春」の撮影も既にクランクイン。この人には山中貞雄の伝記映画の企画もあってそれも楽しみ。「竜馬暗殺」は高く評価される映画であるが私はあんまり好きではない。それよりも「スリ」や「美しい夏 キリシマ」と言った最近の作品の方が好きだ。

 「美しい夏 キリシマ」では自身の少年時代の戦争体験を描いていたが、戦争末期の人々の様子を群像劇のように鮮やかに描き出しており、監督の意気込みがぐんぐんと伝わってくるような作品であった。本作も戦争をテーマにしている作品で広島の原爆投下直後の広島を舞台に生き残った娘と原爆で亡くなった父親の幽霊との邂逅を描いた、井上ひさしの戯曲の映画化である。舞台はテレビで見たことがあるので、どう映画化するのかと楽しみにしていたが舞台の雰囲気そのままに宮沢りえ原田芳雄のやり取り(浅野忠信も少し登場するがほぼ二人が出ずっぱり)を中心に描いていた。地味な映画であるが、「仁義なき戦い」とは一風違った、やわらかい宮沢りえ広島弁が心地よく、気持ちよく見ていられた。原爆投下後の広島が不自然なほどおどろおどろしいCGで描かれるシーンがある。はっきり言って下手なんだが、それが地獄絵のように見えて変に迫力があった。

 大仰な原田芳雄の演技もいいが、やっぱり宮沢りえが素晴らしい。こんな言い方はあんまりよくないのだが、「宮沢りえ貴乃花と結婚しなくてよかった」と思う。特に今の貴乃花を見てたらそう思うぞ。婚約解消直後から悩み続けた彼女だが、長いトンネルを抜けて見事に日本を代表する映画女優になった。ラストも考えさせるものになってて、ううむとうなってしまった。

父と暮せば 通常版 [DVD]

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