絶対の愛

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■絶対の愛 6/10 第七藝術劇場
★★★
久しぶりに韓国映画が見たくなったので、見てきた。一時期はよく見てたんですけどね、韓国映画。去年ぐらいからあまり見なくなった。別に飽きたわけでもないし、質が落ちたとも思わんけどね。ただ、色濃く鮮やかに自由自在に疾走する様が韓国映画の醍醐味だったのに同じような作品ばっかりになってしまった気がする。

トンマッコルへようこそ」ですごく感じたのだが、安易に泣き所を作りすぎて、場をつなぐためにドラマがあるみたいな感じでドラマの積み重ねがないので、見終わったあとの印象が薄いのだ。厭なことに、この道は日本映画が早くも踏襲しており、それでも面白く見せてしまう韓国映画質の高さはないので、ただのお涙頂戴映画になりさがっておる。それでも映画館で泣きたい人はたくさんいるんで、それなりに受けておる。キム・ギドクが「グエムルがヒットするような国で映画は撮りたくない」と引退宣言をぶち上げた(あれ、どうなったんだ?)こともあったが、日本映画の現状もたいしてかわらんのですよ。

まあそれはともかく。。キム・ギドクである。海外の評価はめちゃくちゃ高いが、本作ではさっぱりの売れず屋さんです。それでもコンスタンスに作品が撮れるのだからすごい。社会世相を盛り込み、等身大の人物の当たり前の暮らしがふとしたことで崩れ去る怖さ、はかなさを容赦なく、泣き、感動ナッシングに描き出す。それは観客に「おまえら、これをフィクションと思うなよ!貴様だってこうなる可能性はあるんだ!」と訴えかけ、あまりの猛攻に生じた心の傷にさらに塩をすり込む。

なんかめちゃくちゃ言うてるんだが、ギドクの映画ってのは本当にそんな映画なのだ。初期作品からずっとだが「受取人不明」をラストで感じた背筋の寒さは今でも思い出すことができる。「これが日常だ。今のお前の幸せはただの偶然なんだ」という声が聞こえたように感じた。

本作は韓国で大流行で近い将来、日本でもはしかの次に大流行となりそうな整形手術がテーマ。彼氏が他の女をちらりと見た、話しかけられたら親しげに話している。それは彼女にとって許されないことだった。喧嘩のあとはお定まりの仲直りのセックス。なかなか勃たない彼氏に彼女は囁く。「さっきの女を想像しながらヤれば?」。情事後に彼女は別の女性を思い浮かべたことを激しくなじるが、男は「おまえがそうしろ、言うたやんけ!」とブチ切れる。。。男にとって女の嫉妬は嬉しい(私だけか?)もんだが、度が過ぎると鬱陶しい。女は、男が自分の顔に飽きたと思い込み、整形手術を決意する。。

整形ってのは単に綺麗になるだけでなく、誰もが持っている他人への変身願望も叶えてしまうので厄介である。他人になるということは自分を棄てること、今までの自分を棄ててでも得るものがあるのか。違う姿になった彼女は再び別の女性として彼の元に現れる。そして彼が彼女のことを深く愛していたことを知るのだ。

ここまではよくある話なんだが、ギドクは手を緩めない。もう後戻りはできないのだ。彼が知っていた彼女はもはや存在しないのだ。そして彼女だけがそれを知っている。後半からのドラマ展開の集中力が素晴らしい。

セックスをモチーフにした彫刻であふれる海岸の公園、二人の出会いの場であり、別れの場になった喫茶店でのシーンがほとんど。空間に制限を加え、登場人物を絞りきった濃密なドラマに酔った。

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