歌謡曲だよ、人生は

歌謡曲だよ、人生は 5/26 テアトル梅田2
★★★★
→2004年の「タカダワタル的」から始まったアルタミラピクチャーズ歌謡映画シリーズの一本(プロデューサーの桝井省志の趣味という説も)。昭和を彩る12曲の映画をモチーフに11人の監督が作ったショートフィルムのオムニバス映画。ちなみにこの歌謡映画シリーズの流れはまだまだ止まらずに「タカダワタル的0(ゼロ)」「こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」「オース!バタヤン」と今後も続く。こまどり姉妹田端義夫て。。いや、もう見事なまでに若者に背を向けた姿勢、俺は応援しますぜ!ちなみに祇園田端義夫ファンクラブって札をかけた家を見たことある。

 素人の蛭子能収(何事につけても真面目に取り組まないオッサンであるが、映画についての姿勢だけは真剣さを感じた。元々、映画監督になりたかったらしい。さもありなん)はご愛嬌としても、監督陣には「スウィング・ガールズ」の矢口史靖、「村の写真集」の三原光尋、「がんばっていきまっしょい」の磯村一路とベテランもズラリ。キャストもけっこー豪華!歌をモチーフに各人が自由気ままに好きなドラマを撮っている。お気に入りは4本。

 三原光尋の「女のみち」。芝居は下手だが、森繁久彌にクリソツな宮史郎と「ごめん」の久野雅弘とのやり取りが面白い。ギャグ映画が大好きな三原監督らしく、ラストに銭湯で思い入れたっぷりに宮史郎が歌うシーンの馬鹿らしさがとっても素敵だ。

 水谷俊之の「ざんげの値打ちもない」。余貴美子の代表作は?と問われれば、これを挙げてもよいほど、彼女のかっこよさが生かされた作品。アナログで泥臭い内容をしっとりと撮っている。昔の歌謡曲って歌詞に深い意味があって、この作品を見ながら歌を聴くと身に沁みいる。

 マモル・マヌー主演の「乙女のワルツ」もそういう映画で、あのどこか悲しげな歌にぴったりな内容であった。ストーリーは平凡だが、狂おしい過去に対する現代の姿がユーモラスに描かれていて、微笑ましい。高橋真唯はこうした昔の女性を演じさせると本当に雰囲気出るなあ。まあ今風ではないんだが。

 矢口監督の「逢いたくて逢いたくて」もストーリーは単純だが、物語のキーになるベンガルの後姿が雄弁すぎるほど、女性に手紙を書き続ける五郎丸がどういう男か、を語っており、作品に奥行きを出している。それに対し、妻夫木聡伊藤歩の演技が軽くてバランスが取れててよい。ラストをあえてロングで撮り、作品に余韻を残している。泣いてしまった。

 キャストを見ると「それでもボクはやってない」に出ていた人が多い。裁判官を演じた正名僕蔵の全然違う役柄とかバスガイドがやばいほど似合う瀬戸朝香とか随分違う印象に戸惑うのもまた一興。先日、急逝した鈴木ヒロミツは二作に登場。「乙女のワルツ」では医者、「みんな夢の中」では同窓会に集まるおじさんを演じた。涙目でうなづくアップがあって少し胸があつくなった。

歌謡曲だよ、人生は 完全ガイド

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