ブロークバック・マウンテン

ブロークバック・マウンテン 4/9 京都シネマ
★★★★★
アン・リーも不思議な監督である。代表作と言うとやはり、アメリカ人にワイヤーアクションの面白さを見せ付けた「グリーン・デスティニー」になるんだろうが、それ以前は「いつか晴れた日に」や「アイス・ストーム」などの文芸作品が得意な監督だった。アカデミー賞にも縁がある監督で幾度かノミネートされている。

 本作も皆様ご存知のようにアカデミー作品賞をはじめとして最多の8部門にノミネートされた。同性愛者を扱った恋愛ドラマがアカデミーの候補に挙がるというのもすごいが、作品賞は取れなかった。監督はアカデミーの保守性を批判するコメントを出しているが、万人が認めるよい映画である「クラッシュ」よりも、問題作と認識された本作の方が後年まで残る作品であることは間違いないだろう。映画ファンならご存知だろうが、後世まで残る名作でも賞を受けていない作品は多い。

 カウボーイの同性愛、というセンセーショナルなテーマを扱った映画でありながら、静かで味わい深い作品になっている。しかし、一見芸術映画のような本作にはしっかりと人を斬る刃がついている。それはカウボーイの映画、つまり西部劇で描かれる男同士の友情が同性愛と紙一重であり、そのことを示したことである。

 愛し合いながら、別々に暮らし始めるジャックとイニス。しかし、二人はまたもや恋に落ちてしまう。メロドラマを大袈裟に描くのではなく、淡々と描き出す手法に酔った。ラストのイニスとジャックの父親とのやり取りに涙した。キャストでは主演のヒース・レジャー、ジャック役のジェイク・ギレンホールはもちろんよかったが、イニスの奥さんを演じたミシェル・ウィリアムズが可愛らしい。実生活ではヒース・レジャーの奥さんというのがびっくりだ。どんな気分で演じたのだろう。

オリジナル・サウンドトラック~ブロークバック・マウンテン

オリジナル・サウンドトラック~ブロークバック・マウンテン

ブロークバック・マウンテン (集英社文庫(海外))

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