次郎長三国志シリーズアンコール記念!!次郎長三国志シリーズリメイク予想キャスト 天の巻

 時代劇ってのが低調になったのは、誰もが知ってる物語が少なくなったからだと思う。ここ最近の大河や単発のスペシャルを見てればわかるんですが、題材が戦国ものと幕末ものしかない。限られた題材で何回も撮っているから、視点を変えてみたり、有名な武将の妻を主人公にしてみたり、これは別に今に限ったことじゃなくて、80年代ぐらいからもうやってたんですが、今や手詰まりの感がある。何で戦国か幕末が増えるか、というと他を皆が知らんからです。所謂、信長、秀吉、家康の戦国時代と新撰組しか知らない。あとは社会の時間で教わる歴史です。悲しいことに忠臣蔵も「赤穂浪士の討ち入り」という史実の扱いで「仮名手本忠臣蔵」は忘れられている。歌舞伎見てる人しかわかんない。ああ、厭な時代。

 昔は、70年代ぐらいまでは時代小説が今よりももっと皆に読まれていた。そして浪曲や講談のネタとして皆に親しまれていたのだ。当時の漫才のネタを見ておったらわかるんですが、「曾我兄弟」や「荒木又右エ門」、「勧進帳」のパロディが多い。これが今、全然わからない。今のドラマの作り手で一から史実を描いてその上にドラマを築くというようなことができる人はいませんので、どうしてもみんなが知ってる戦国もんで、ってことになるのだ。

 清水の次郎長もそうした忘れられてしまったネタの一つでドラマの題材にはなりにくい。それから長谷川伸尾崎士郎中里介山の時代小説って本当にすたれたね。。「一本刀土俵入」「人生劇場」「大菩薩峠」って昭和30年代は誰もが知ってる小説だったんだが、今の若い子は知らんね。長谷川伸は映画化に大変理解のある作家だったので、彼の作品を原作にした映画も「沓掛時次郎」とか「関の弥太っぺ」といい作品が多い。実際に小説も面白いしね。もったいない話やわ。

 昨年の6月に山本一力の「次郎長 背負い富士」がドラマ化された。従来の次郎長ものとは違い、次郎長の生い立ちにスポットをあてた作品でなかなか面白かった。脚本がジェームス三木だったが、この人の作品にはやはりはずれはない。あまり描かれることがなかった荒神山以降のエピソードがきっちり語られていたのも好感が持てた。

 が、子分のエピソードが随分削られてしまい、大政、小政、石松しか出てこないのが実に寂しい。(法印なんて荒神山で出てきてすぐに死ぬ。確かに史実では戦死してるんで間違いはないが、やはりさびしすぎだ)やはり次郎長ものは子分と一緒にワッショイ!ワッショイ!と行きたいもんである

 よって、今回のリメイク予想キャストはマキノ雅弘東宝での「次郎長三国志シリーズ」のリメイクである。ここで一応説明しておくが、次郎長三国志シリーズとは日本映画の祖であるマキノ省三の長男、マキノ雅弘監督が東宝で撮ったシリーズもの。原作は長谷川伸のお弟子さんで、昨年に亡くなった村上元三の同名の小説。

 思えば、昨年はシネマヴェーラ渋谷での一挙上映に村上先生の死、そしてマキノ雅弘の甥っ子である津川雅彦マキノ雅彦として初メガホンを取った、マキノづくしの年だったんだな。。こんなこと言うてるのはうちのブログぐらいでしょうが。

 当時の東宝東宝争議が終わった直後で組合運動に嫌気がさして監督、俳優は大量脱退。一方、争議に参加したスタッフ、山本薩夫今井正をはじめとした優秀なスタッフも東宝を去っていた。東宝争議の最中に東宝は新東宝を設立。東宝は配給に専念して、新東宝に製作を委託しようとしていたが新東宝の裏切りにあって製作を再開したところであった。

 スタッフは若手ばかり、俳優も若手ばかりの中でお声がかかったのがマキノ雅弘。早撮りの名人でとにかく早く、安く、面白い作品を連発していた。戦後の混乱期、マキノは大変重宝されてあちこちで監督したが、その待遇ははっきり言って便利使い。忙しさのあまり、疲労回復に利くと評判だったヒロポンを打ち続けてヒロポン中毒になっていた。(本人は否定)昭和27年から昭和29年にかけてシリーズ9本。(27年に2本、28年に5本、29年に2本)シリーズは大ヒット東宝が映画会社とやっていけるようになったのは安い予算であたる映画を作り続けたマキノの功績と言ってもいいだろう。

 ちなみにマキノは以降もほぼ同じ脚本で日活、東映で「次郎長三国志シリーズ」をリメイクしている。マキノはリメイクの名手で若き日に山上伊太郎と組んで作った代表作のほとんどをリメイクしている。穴埋めに2週間で撮ってくれ、なんてことがざらだったので脚本を考える暇がなかったというのが実情だったらしい。弟のマキノ光雄が「昔にやったアレをリメイクしてくれ」としょっちゅう頼みに来ていたので、癖になったらしい。

マキノに興味のある人は「マキノ雅弘自伝・映画渡世 天の巻、地の巻」(2巻)を読みましょう。

映画渡世・天の巻―マキノ雅弘自伝

映画渡世・天の巻―マキノ雅弘自伝

映画渡世・地の巻―マキノ雅弘自伝

映画渡世・地の巻―マキノ雅弘自伝

 なおスタッフには若き日の岡本喜八が助監督でシリーズを通して参加している。1作目、2作目は完全に岡本喜八調だもんな。製作は黒澤明と組んで「七人の侍」などを作りながらも後年はなぜかポルノに転じた本木荘二郎、構成は若き日に「新しい村」に参加したこともある、「七人の侍」など黒澤明の作品で有名な小國旦那(橋本忍の「複眼の映像」参照*1)こと小國英雄。キャストは小堀明男、田崎潤河津清三郎、水島道太郎、田中春男森繁久彌、小泉博、澤村國太郎長門裕之津川雅彦のパパ)、久慈あさみ、若山セツ子、廣澤虎造。。。河津、澤村、虎造をのぞいて当時はまだまだ無名の役者揃い。この中で皆様が唯一ご存知な森繁さんもこの作品をきっかけでブレイクします。

ちなみに全九作は以下のとおり

次郎長三国志 第一部・次郎長売り出す
次郎長三国志 第二部・次郎長初旅
次郎長三国志 第三部・次郎長と石松
次郎長三国志 第四部・勢揃い清水港
次郎長三国志 第五部・殴込み甲州
次郎長三国志 第六部・旅がらす次郎長一家
次郎長三国志 第七部・初祝い清水港
次郎長三国志 第八部・海道一の暴れん坊
次郎長三国志 第九部・荒神山

ちなみに私は、昨年の12月に高槻松竹セントラルで第9部以外は全部見ております。素晴らしいぞ!高槻松竹セントラル!

 前置きはこれぐらいで。。まあどうせお遊びなので。。好きにやらせてください。津川雅彦もマキノを名乗るんなら、「次郎長三国志・石松開眼」(第八部「海道一の暴れん坊」のこと。マキノは本作の題名を「石松開眼」で考えていたので、うちでは「海道一の暴れん坊」を「石松開眼」と呼びます)だけでもリメイクしてくんないかな。「寝ずの番」でも次郎長一家の歌「おいら死んだとてなー」(この歌、何かの民謡なんでしょうか?ご存知の方は教えてください)を使ってました(「おれたち、噺家はよー」の師匠の霊前で歌うシーンがある)し、おじさんのことは十分に意識はしてるんでしょうが。彼が監督するんなら、夕顔はあの不細工な娘がやるんだろうか。。 

清水の次郎長

オリジナルでは小堀明男。マキノいわく「もとが大体、御用提灯みたいな、ボンボロチキな顔してるんだから、コクがないでしょう」(ボロカスやな)俳優さんなので、見せ場は「次郎長三国志 第二部・次郎長初旅」で啖呵を切るシーンぐらい。ここはぼんやりしてても、この人のために働きたい!と思う人で黙って座っているだけで絵になりそうな親分さんがふさわしい。ということで「相棒」が絶好調の水谷豊か市井のおっさんやらせてもうまい中村勘三郎がいいな。しかしクセを加えたいのならビートたけしもありだ。

★大政

オリジナルでは河津清三郎。元武士で滅法頭が切れる。次郎長の軍師で活躍は随所に見られる。ここはどっしりとした風格があってチャンバラできる人をおきたい。ということになればやはり古田新太でしょう。「花よりもなほ」のイメージで行こう。次郎長がビートたけしならここは大杉漣。茶目っ気と色気が欲しければ阿部寛

★桶屋の鬼吉

オリジナルでは田崎潤。このシリーズの発端は田崎の持ち込み企画だったらしく、鬼吉は自分がやりたいと押しかけ女房。「次郎長三国志 第一部・次郎長売り出す」では次郎長の一番目の子分として登場。ラストでは棺おけ背負って竹やりで突撃をかける。実質、主役ですな。以降はもっぱら関東綱五郎、法印大五郎と共にコメディリリーフとして活躍。名古屋弁ができないとしんどいが、阿部サダヲ梶原善あたりならうまくこなすであろう。少し贅沢には香川照之なんてよろしいな。芸達者でひとたび登場したら場の空気をさらってしまうような個性派を配役して欲しい

★法印大五郎

オリジナルでは田中春男。田中はこの役柄が気に入って、東映でマキノがシリーズをリメイクした時にも同役で出演。後年、マキノがテレビでやった「マチャアキ森の石松」にも同役で出演しようとしてたのだから、これは損得抜きで本当に気に入ってたのだろう。リメイクが決まったら、墓場から田中春男が甦ってきそうな雰囲気さえあるが、ここは偽坊主の格好が死ぬほど似合いそうな生瀬勝久の出番だろう。関西弁もできるし。他に「背負い富士」で石松やった山本太郎も喜んでやりそうだ。大阪弁がうまければ、岡田義徳あたりもいいな。

「地の巻」に続く!近日更新予定!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!

次郎長三国志―マキノ雅弘の世界

次郎長三国志―マキノ雅弘の世界

*1:

複眼の映像 私と黒澤明

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・・すべての日本映画ファン必見の名著