UNLOVED

 ある女性。年は30過ぎで市役所勤務の独身。服装は地味。古いアパートにひっそり暮らしている。仕事は出来る方だが何故か、昇進試験を受けない。よってずっと雑用ばかり。上司の「どうして試験受けないの」の質問に「わたし、いまの仕事で満足していますから」。

 そんな彼女に彼ができた。年は38歳。ベンチャー企業の社長。マスクよろしく、大のお金持ち。ブランドの服や高い料理、ありとあらゆる贅沢を提供されますが彼女は居心地悪い。。と断ってしまいます。曰く、「私は現状に満足してるの。今のままでいいの。あなたとは住む世界が違うの」と男と別れてしまいます。

 次に仲良くなったのはアパートの一階下に住む年下の男。年は30に届こうかと言うのに正業なしのだらしない男ですが波長があったらしく、恋仲になってしまいます。同棲を始めたある日、前の彼氏がやってきて。。

 一流のレストランに連れていかれても隙あらば、近所のラーメン屋で食事を済ませてしまう。買ってもらった45万の服も返してしまう。実家の天井とそっくりの天井があるからと貧乏アパートに住み続ける。。

 彼女自身は別に怠け者ではないし、向上心が無いわけでもない。ただ、世間で言う”成功”よりも自分が大事にするスタイルを大切にしたい。そんな自分と一緒に暮らせる人がいい。これ実は相当にハードルが高い。私も平穏に毎日暮らしたいと考えていて、共感するところも多いのですが、こういう人と暮らしたいかと言われれば。。う〜ん。。

 仲村トオル演じる元カレは立ち止まることなく、栄達の道を歩んできた男。現状に満足するなんて思うだけでも負けだと考えている。元より水と油。

 それに比べ、松岡俊介が演じる冴えない男は彼女にマインドは近いが前の彼氏を見て迷いが出てしまう。「こいつはなんで俺を選んだんだろう」と。

 男と言う動物はなかなかそうした境地には辿り着けないようで結局は世相に流されてしまいます。出世という人参をぶら下げられてしまうと飛びついてしまう。また仕事というものは出世しないと面白くありませんしね。(最近わかってきた)女性は家庭に入るという選択肢もあるので(もちろん、男にもあるんですけど)必ずしも仕事一番にはならない。世間の見るキャリア・ウーマンの未来ってのは寿退社かバリバリやるかの二つのような感じがするんですが、実際のところはそんなことなく、彼女のような生き方も選択肢であるわけです。ただ女性がずっとマイペースで働ける職場なんてなかなかないのが実情で、職業を地方公務員に設定したのはそれぐらいしかないということでしょう。

 そうした女性の新しいライフスタイルを描いた映画で、なかなか興味深い映画であった。