氷点

☆氷点 5/7 高槻松竹セントラル(サスペンス傑作選)
★★★
三浦綾子のベストセラー小説の映画化。この小説は幾度もドラマ化されていて今年もまた石原さとみ主演で11月25日、26日とドラマでやります。映画化に先立ち、テレビ朝日でドラマ化されたのが一番有名で最終回の視聴率が40%を超えるまで大人気で社会現象にもなったそうです。「笑点」という題名は実は氷点のパロディだったのは有名な話ですな。映画はドラマのヒットを受けて大映が製作。監督はアカいセシル・B・デミル(by淀川長治)こと山本薩夫

 冒頭から飛ばしてます。若尾文子がピアノを弾いていると亭主の船越英二が外から帰ってくる。狼狽する妻に不信感を抱いた船越は子どもの居所を聞く。徹はお手伝いさんと映画を見に行きました。ルリ子はそのあたりで遊んでいるのでしょう。つまり家の中は妻一人であった。なのにテーブルにカップが二つ。そして灰皿には煙草の吸殻が。来客があったのだ。誰が来たのか、と聞こうとすると妻は足早に机の上を片付けてしまう。近くにいるはずのルリ子が見つからない。皆が懸命に探している。次の日、娘は湖のほとりで見つかった。亭主、妻、徹は一目散に走っていく。娘を見つけた!しかし、、息は既に無かった。冷たくなった娘を抱きかかえ、号泣する亭主。半狂乱のようになって身悶える妻。悲しみに身を引きちぎられそうな思いを抱えながらも妻をチラリと見る亭主。その目。徹がワンワン泣き出した。事件を報じる新聞記事。そこには犯人が獄中で自殺したことが載っている。。。ここで「氷点」という題名が出る。このショッキングのオープニングを山本監督は息も継がせずにスピーディーに見せる。オープニングからもう観客の胸は物語にわしづかみにされるのだ。素晴らしい始まり方だ。

 人間の感情と感情のぶつかり合い。特に若尾文子船越英二のやり取りがすさまじい。両方が相手にすさまじい怨念を抱いて、異常な行動に走る。もうどろどろである。どろどろのドラマをたくましく描くことで定評のある大映ドラマはこの映画から始まったのではないか、と思った。若尾文子のむせ返るような色気が女の情念と重なって、すごい迫力になっている。若尾文子を撮るのがうまかったのは増村保造だけではないのだ。ドラマではこの役を飯島直子がやるのか。。なんか役不足な感じがするが、かと言って誰がいいかと問われれば適当な女優が思いつかん。若尾文子がいたポジションって空いてるんだよな。最も増村保造みたいな監督も今はおらんけど。

 洋子を演じたのはデビューしたばかりの安田道代。(今は大楠道代)手足もすらりと長く、豊満な体。体はすっかり大人なのに、あまりにも無防備でそして無邪気である。若尾文子と対照的に邪気の無い子どもに描かれています。しかし、その彼女も運命に翻弄されていく。。義理の妹に恋してしまう山本圭若尾文子に迫られる津川雅彦(今回のドラマにも同役で出演とか)もよいけど、人生を悟りきったようなおばはんを演じる森光子がいい。この人は喜劇の経験があるので、受けの芝居ができるのですね。

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氷点 -昭和41年放送版- [DVD]

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氷点 (三浦綾子小説選集)

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続 氷点 (三浦綾子小説選集)

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