ただ、君を愛してる

ただ、君を愛してる 11/9 MOVIX京都シアター7
★★★★
→正直驚いた。何に驚いたか、と言うと結構感動してしまっている自分に、である。この手の映画は苦手で本作も「宮崎あおいが出てるんなら見なくちゃな。多分むごいだろうけど」というかなり軽い気持ちで見たのだが、これが面白かったんである。。そんな意外な感じで言われてても製作陣はちっとも嬉しくなかろうが、日本映画でこの手の嬉しい期待はずれなんてほとんどないものだから、嬉しいより先に驚きの気持ちが先に出てしまうのである。しかも東映でしょ、これ毎年恒例の夏場から正月映画への綱渡りの中の一本でこの出来栄え、こりゃ事件ですよ。

 とは言え、演出手腕に別に見るものはナイ。ストーリーもありきたりだし、ニューヨークのシーンからのスタートも使い古された感があって新鮮味は何も無い。ただよくがんばったと思うのは、ラストまで色気出さずに恋愛ドラマに徹したところ。このネタだけで最後まで引っ張るのはしんどいかな、とサイドストーリーをおいたり、余計な登場人物を出さずに最初から最後まで玉木宏宮崎あおいの二人の物語にしているところがえらい。加えて黒木メイサ。実は玉木宏は彼女に惚れており、ドラマでも重要なキャラクターなんだが、本人の出演シーンは少なくて、その存在を記号的に使って、あくまでも二人のドラマとして進めているところがなかなかの工夫だ。まあ黒木メイサには気の毒な話で最後まで彼女の影は薄い。

 出色なのはやはり宮崎あおいの演技だろう。大学生なのに心は子供という主人公、ボサボサの髪に馬鹿でかい眼鏡、ズルズルの汚い服装で、ドーナツビスケットしか食べない、という特異なキャラクターを演じている。これが徐々に大人になっていく様を彼女は見事に演じ分けている。実に細かな仕草で表現されていく。だからこそ、あの陳腐で予想できる(お約束のアレです)ラストでも感動できるのだ。笑い飛ばしてしまいそうになるおとぎ話に説得力を持たせる演技。この子はどんな映画にでも全力投球なんだねえ。。

 宮崎あおいは今でこそ皆が知ってる女優になりましたが、初期の彼女は深夜ドラマに出る一方で、インディーズ系の作品に好んで出ていた。が、成功したのは「害虫」と「理由」ぐらいと言っても差し支えなかろう。宮崎あおいはいいけど、つまらん作品やな、と思う作品が多くて「ラブドガン」「ギミー・ヘブン」「青い車」なんかがまさにそうなんだが、彼女の存在感、演技力がかえってその作品のくだらなさ、奥行きのなさ、工夫のなさをくっきり見せてしまっていた。ブレイクのきっかけがアイドル映画「NANA」だったのは不思議なものだが、彼女の作品は彼女のアイドル性、愛らしさを活かした方が出来栄えがいい。本作もその流れにあるもので、高い演技力に加えての彼女の笑顔の愛らしさが作品の魅力になっている。

 CMやNHKを中心にしたドラマの仕事が増えてきており、インディーズ映画の女優から国民的女優の道を着実に歩んでいる。この道はかつて田中麗奈が歩もうとしていた道だが、映画にこだわりすぎたために失敗していた。5年ほど後発の長澤まさみが順調に映画で売れていることを見ると田中麗奈は生まれる時代がちと早すぎたと思わざるをえない。。

 宮崎あおいばかり褒めるのも何なので玉木宏にも触れておくが、あの端正な顔つきで晩熟の大人しい青年なんかできるのかと思ったけど、皮膚病の薬の匂いがコンプレックスになって恋愛に積極的になれないという設定がうまい。ぼんやりとした青年をうまくやっていた。「ウォーターボーイズ」ではコメディリリーフでしたし、案外演技できる人なのかも。チョイ役でしたが「ゴーストシャウト!」のケーキ屋兄弟もなかなかよかったです。

 細かいところを突っつけば色々と不満もありますが、心に残る佳作となっています。ラストの大塚愛の歌も胸にしみます。

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