仲谷昇、死去

　仲谷昇が亡くなった。享年77歳。割と若く見える俳優だったので、そんな年だったとは知らなかった。この人は舞台の人で文学座出身。後にクーデター的に集団で脱退しています。文学座は残ってる人も出て行った人もすごい、というかつてのアスキーみたいなところですが、仲谷昇もその一人。

　中学生の時に見ていた「マジカル頭脳パワー!!」の「マジカルミステリー劇場」がやっぱり思い出深い。仲谷昇演じる探偵が刑事の大地康夫の依頼で次々と難事件を解決していくストーリーで間にクイズが入る。ミステリー劇場やってた頃のこの番組は面白くて、毎週見てたな。永井美奈子が司会に抜擢されてから、この手の金のかかるコーナーがなくなって見なくなった。

　映画全盛期には色眼鏡をかけたニヒルなヤクザか役人のような役柄、悪役が多かった。「八百万石に挑む男」では市川右太衛門に付き従う浪人を演じていた。主演作は中平康の「砂の上の植物群」。画面の外から登場人物に女性の声で呼びかけたり、時間軸もめちゃくちゃな中平節暴発の実験作でなんだかよくわからんが、仲谷昇のニヒルな色男っぷりはハマリ役。後年になっての代表作はやはり「疑惑」につきるだろう。ホステスの女と結婚した大富豪で妻を車に乗せてのドライブ中に川に飛び込む事故で死亡。妻は生き残った。警察は妻が夫に多額の生命保険をかけていたことから、妻による殺人と疑う。鬼妻クマコを演じた桃井かおりが注目されたが、夫の仲谷昇もすごい演技を披露していた。いい年をして若い男に狂う中年の妄執、親戚と妻の不仲による葛藤、そしてクマコが信じていたような女ではなかったことへの絶望。。それらをすべて背負った中年男の悲哀を見事に演じていた。

　本名は仲谷昇流。そこから「流」の字を取った。なんか本名の方が芸名に見えるな。岸田今日子も悲しんでいるだろう。二人が元夫婦だったとは知らなかった。合掌。

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