第32回東西落語名人会に行ってきた

 23日に神戸文化ホールで開かれた「第32回東西落語名人会」に行って来た。毎年、神戸で行われている落語会で前から興味はあったのだが、4800円という値段に加えて、神戸という地理的な遠さから二の足を踏んでいたのだが、今年は東京から桂歌丸師匠が来ると聞いたので行ってみた。この日の出演は東京から桂歌丸柳家小三治柳亭市馬上方落語からは桂春団治桂三枝笑福亭福笑という顔ぶれ。いやもうため息が出ますな。落語ファンでなくても、歌丸師匠と三枝さんは知ってるでしょう。歌丸師匠と小三治師匠を生で見るのは初めてである

 私が生で見るということにこだわるのは、その人の舞台を生で見たというのが、その時代を生きた価値になると思うからだ。私が生を受けてから28年。その間にも落語家でも多くの物故者が出ている。私が初めて生で落語を聞いたのは中学一年生の頃。桂枝雀桂ざこばの二人会であった。その枝雀も既にない。枝雀寄席の公開録音も含めて10回ぐらいは生で聞いていると思う。物故者となった桂歌之助笑福亭松葉桂米之助桂吉朝の高座は勉強会などで幾度も聞いているし、桂文枝も中学生の頃に京都市民寄席で(私は年間指定席を取っていた)「悋気の独楽」と「猿後家」を聞いている。

 今でも悔やんでいるのは古今亭志ん朝を見ることができなかったことだ。東京に住んでいた頃、浅草によく遊びに行ったが(観音様の裏には行ってねえ)志ん朝が発起人だった住吉踊りの看板が立った浅草演芸ホールの前をよく通っていた。この住吉踊りが志ん朝最後の高座だったことを思うとこれが最後のチャンスだったのだ。満席だったのと2800円ってのはちと高いなと二の足を踏んだ。落語好きを自認しながら、東京での寄席デビューを果たしたのは結局、今年の3月。新宿末広亭。東京に住んでおった頃、通っておればもっと充実した江戸ライフが送れたものの。。いろんな意味であの時、入っておけばよかった、と今でも悔いる。

 歌丸師匠も小三治師匠も大好きな落語家である。失礼な話だが、お二人ともそんなに若くない。見られる機会があれば、見ておこうと思ったのである。それから桂春団治。高校生の頃に「皿屋敷」を聞いているが、久しぶりに生で見たかった。5月の市民寄席に出る予定だったのが、怪我のために休んでいる。待ってました、という感じだ。

 3時間近くある落語会であったが、期待通りにクオリティの高い落語会であった。端正な江戸弁が心地よい「高砂や」の柳亭市馬、新作「釣道入門」で会場をどっかんどっかん湧かせる笑福亭福笑、ゆったりとしたテンポで落語の世界に観客をのめりこませていく「錦の袈裟」の柳家小三治、面白さに定評のあるまくらもよかった、若旦那よりも実は遊び人の親旦那に思いをこめて「親子茶屋」を語った桂春団治。中入り後には上方落語界念願の天満天神繁盛亭をオープンさせた桂三枝の「天満の元狗」(「元犬」のアレンジで舞台が天満になっている)そして歌丸師匠の「井戸の茶碗」。堪能したねえ。。

 歌丸師匠の「井戸の茶碗」よかった。二人の頑固な侍の間で右往左往する紙くず屋の困りがめちゃくちゃ面白かった。淀みない口調も安心して聞いてられるし、笑いをふんだんに加えて面白い作品にしています。笑点に加えて落語芸術協会の会長とめちゃくちゃ忙しいと思うんですが、落語の稽古は欠かしてないね。小三治も聞けてよかった。米国に住む友人から「生きているか」と言う葉書をもらった、まくらも面白かった。生の醍醐味を充分に感じられた落語会であった。天満天神繁盛亭もそろそろ行かなあかんな。。当分は満員だろうが。