ロード・オブ・ウォー
●ロード・オブ・ウォー 12/24 京極弥生座2
★★★★★
→満員だった。何もクリスマスにこんな映画見に来なくても。。
時代を風刺した作品を得意とするアンドリュー・ニコルの監督作品。「ガタカ」は公開規模も小さいマイナーな映画でしたが、人間の生きる意味とは何かという命題に果敢にも挑戦して、メッセージをぎゅっと詰め込んでテンポよくできあがった名作でしたね。続く「シモーヌ」は俳優に振り回される映画業界を風刺した作品で喜劇風味を加えて舞台のような作品でしたが、やや行き過ぎた感があってあんまり楽しめなかった。しかもアンドリューはこの映画で主演女優と結婚しとる。おまえ、ただ女優口説きたかったからこの映画作ったんちゃうか、と邪推してしまいがちですが、まあいいや。周りに振り回されるアル・パチーノが面白くて、そういやこの人は舞台の人だったなと思い出させる作品でありましたな。
で、今回はニコラス・ケイジを主演にすえての「ロード・オブ・ウォー」。なんと世界を飛び回る武器商人を描いた映画。脚本ができたのがイラク戦争勃発直後という絶妙なタイミングだったので、金を集めるのが大変だったらしい。このご時勢にこんな映画作ろうとするなんて、その心意気だけでもたいしたもんだと思う。
本作の面白いところはニコラス・ケイジ演じる武器商人の描き方だろう。アンドリューは実在した武器商人5人からこのキャラクターを作り出している。つまり架空のキャラクターなんだが実在したエピソードを使ってリアリズムを出している。その一方で女のために破産しかけたり、試し撃ちで子分を撃ち殺してしまう山賊の親分(でもアフリカの国家元首)に「一度でも使ったら返品は受けないからな」とつぶやいたり、銃を握ることはからきし苦手だったりというシーンを入れて、等身大の人間くさい人物を描いている。彼はあくまでも武器商人。俺には武器商人の才能がある、と新ビジネスを起こすような気持ちで武器の買い付けに向かう。彼の内心での苦悩や呵責などを描かずに狂言回しとしての武器商人の実在を描いたのがうまかった。また同時にユーリーの弟で相棒だったヴィタリーをストレスから麻薬に逃れてしまうキャラクターとして描き、ドラマをきっちりと作っている。
彼を半歩遅れで追い続けるインターポールの刑事ジャックにイーサン・ホーク。何度失敗しても執拗に追い続けるしつこい刑事を熱演している。この人はこういう役柄が似合いますな。アンドリュー・ニコルの映画は女優が重要。ユーリーが全財産捧げてプロポーズするエヴァにブリジット・モイナハン。露骨にいい女だなと思わせる女優さんでいいキャスティングだと思う。敵役のイアン・ホルムも渋い。
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