無宿人別帳 1963年 (松竹京都)

☆無宿人別帳 11/18 高槻松竹セントラル(不滅の時代劇傑作選4)
★★★★
→江戸時代の無宿者を描いたサスペンスドラマ。主演は中井貴一の親父、佐田啓二中井貴一にそっくりなのに驚くが、息子と違って目に色気があってなんとも艶っぽい。本作では腕が立つ、ワケありな無宿者を演じている。

 しかしその佐田啓二以上に恐ろしくアクの強いキャストが揃っており、渥美清すら印象に残らん。本作での渥美清の扱いで「男はつらいよ」でブレイクする前の渥美さんの使われ方がなんとなくわかる。登場人物は多いが、小国英雄のキャストをくっきり描きわける脚本が成功しており、たっぷり楽しめる。

 新任で潔癖症の奉行を演じる田村高廣、その奉行に取り入ろうとする与力の長門裕之、彼の愛人で奉行に近づく左幸子、無宿人の差配で人情家の中村翫右衛門、物静かだが何を考えているのかわからない世話役の三國連太郎、自分が大泥棒だと告白して、護送される最中に死んでしまう伴淳三郎、親分肌の坊さん宮口清二、策謀家の与力、小堀明男、この中では普通の人、津川政彦、三上真一郎とキャストを挙げるだけでドキドキするような豪華キャストで彩っている。渡辺邦男ならこのキャストで3本ぐらい撮ってしまいそうだ。

 ホームドラマが得意の松竹ではあるが、本作では鉱山の現場をセットで再現。キャストは泥にまみれ、咆哮し、走り続ける。なんか東映の映画みたいだ。三國連太郎がちっぽけでしょうもない、でも悲しい悪党を人間くささたっぷりに演じている。この人はこの手の演技が抜群にうめえ。それに対してちっぽけでもそこに居直った小悪党を小気味よく演じたのは長門裕之。見栄や美学なんてどうでもいいや、と蛇のように生きていく生き様。長門裕之が脇役として長持ちしたのはこうした男をリアルに演じられたからだろう。それから、忘れちゃなんねえのが、わずかな登場シーンで映画の世界観をガチっと固めた伴淳三郎やね。

無宿人別帳 (文春文庫)

無宿人別帳 (文春文庫)

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