カーテンコール

カーテンコール 11/26 シネ・リーブル梅田シアター2

→「半落ち」の佐々部清監督の最新作。この人の作品はどうも私は好きになれない。俳優の持ち味を生かし、名演技を引き出す。多彩なキャラクターを繰り出しながらもストーリーを無難にまとめる演出力は高いと思うんだが、非常に生真面目な映画で肩が凝るのだ。それから、感動するシーンを強引に挿入してストーリーをまとめる癖があって、なおかつ自分で作った映画見て泣いてそうだ。人情噺やってるうちに泣き出す落語家みたいでナルシズムを感じる。厭な奴。(あくまでも想像です)

 本作もそうした悪いところが如実に出た作品で古きよき昭和の映画館事情について描く前半部分はよいのだが安川修平を探す後半の件は本当にぐだぐだで見てられんかった。藤村志保の役柄、役名の絹代という名前から田中絹代をイメージしてるんだろうが、小づくりの可愛らしいおばあさんを楽しそうに演じていて好感が持てた。監督は日本版「ニューシネマパラダイス」みたいな映画を撮りたかったそうだが前半部分は雰囲気をよく似せている。が、後半である。現在の安川修平を伊藤歩演じるタウン記者の橋本香織が捜すのだが、どんどん変な方向に向っていくのだ。日本人か朝鮮人か、と言い出して話は突然、在日差別がストーリーに盛り込まれていく。それがテーマになるわけではないが、ずっと何かにつけて出てくるのだ。この描き方も中途半端で一体、何が言いたいのか。よくわからん。

 そんなことを描くのならばもっと先に描かねばならないのは安川修平の人柄だろう。つたない素人芸にしがみつき、妻を過労死させ、子どもを棄てる。。と業が深すぎるのだ。まともな人間ではない。そうした生き様を描いて、ステージ芸に憑かれた男の狂気を描いてもよかったのではないか。映画が好きだったのね、仕方ないよね〜と早川義夫の歌のように済ませられる人はよほど苦労した人か、ただの世間知らずのどあほうである。俺は娘の「今更、お父さんになんか会いたくない!」という意見が最もだと思い、ラストの登場もちっとも感動できなかった。それから伊藤歩演じるタウン誌の記者のキャラクター設定がまるであかん。大体、インタビュー中に何の断りもなく、録音機を回し始めるような無遠慮な記者いるか?

 前半が星3つで後半は星ゼロである。あまりにも後味が悪いので本当は星をゼロにしたいのだが福本清三さんが映写技師の役で味わい深い演技を見せてくれたのと鶴田真由の旦那役の津田寛治が実によかったのと体の線がすごい勢いでエロくなってきて、脱いでいる時(「ふくろう」の全裸での水浴びシーンよりもだ)よりもエロい伊藤歩に免じて星一つ。

カーテンコール (角川文庫)

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