一年間、ありがとうございました。

 今日で今年も終わりです。昨日、「社会派くんがゆく! 維新編」を読みながら今年の出来事に思いをはせていましたが、今年はロクな年ではありませんでした。よく考えなくてもそうだと思います。マンションは偽装だわ、電車はひっくり返るわ、NHKの職員は着服するわ、放火するわ、エビジョンイルは辞めても院政ひこうとするわ、アイドルが万引きで駄菓子屋つぶしたことを嬉々として報告するわ、またそいつが何事も無かったように年内に復帰するわ、エイベックスがインスパイアという名でパクリを敢行しようとするわ、あちこちでわけのわからん殺人が起こるわで、フィリピンで日本兵士が見つかったとか嘘つく奴もおるし、最悪でございました。めでたいニュースと言えばロッテの優勝とかサーヤの結婚とかもありましたが、所詮他人事でございます。心の底からどうでもええことでございます。ちなみにテレビ局の乗っ取りもありましたが、あれもどうでもええことでした。スポンサー上位のテレビ局なんざあ、誰がやっても一緒でございます。

社会派くんがゆく! 維新編

社会派くんがゆく! 維新編

 ただそうした事件の積み上げから今年の傾向をあえて申すならば、ネットの社会化でございましょう。こう申すと「何ゆうとんねん。今時、ネットの社会化やて。みんな、とっくの昔に使ってるやないか。アホになったんちゃうやろか」と思われるかもしれません。私がネットを始めたのは97年の3月でホームページを作ったのは9月でした。当時は大学でもメールアドレスが交付されるなど徐々にネット利用者が増えてきた時期でしたがほとんどの利用は電子メールだったと思います。別に電話で済ませばいい内容をわざわざメールでしていた。そんな利用だったと思います。企業のホームページもまばらで個人のホームページなんてお粗末なものばかりで半年ほどで無くなる”カストリサイト”がほとんどでした。それからざっと8年。当初はメール利用から検索サイトの発達による情報収集の手段、そしてブログの発達によって個人の情報発信が一般的になり、ネットの世論が作られるようになりました。当初はマニアの情報交換の場であった2ちゃんねるは巨大化し、まさに”「ハッキング」から「今晩のおかず」までを手広くカバーする巨大掲示板群となりました。従来のメディアで語られないものを取り扱う場としてネットは重宝されていたわけですが、それが掲示板の巨大化によって従来のメディアに対抗するものとして成長し、そしてそこで作られた世論が一般世論を飲み込みつつある、それが今の現状であると思います。昨年のイラクでの人質狂言事件がその大きな発端であったと思いますが、嫌韓流電車男あびる優の万引き事件、エイベックスパクリ疑惑はいずれもネットから出発しています。口コミの巨大版のような形でネット世論はネットより飛び出して社会に世論を形成しつつあります。象徴的だったのは今年の9月に行われた総選挙です。新聞も週刊誌もテレビも小泉首相に対しては否定的であり、大敗するであろうという予想が大半でありました。しかし、ネットは違いました。郵政民営化は国の財政構造を根本から変えるのに必要なものなんだ、と説くブログがアクセス数を伸ばし、ネット世論を形成しています。結果は皆様、ご存知のように小泉の大勝。ネットの力も大きかったと思います。新聞、テレビ、映画会社などの従来からのメディアはネットをCMの場としての利用を考えており、番組のサイトを作るなどはしてますが双方向的なメディアとしての利用はまるで考えてなかったと思います。ただ、踊る大捜査線のスタッフは97年頃からネットの双方向性をにらんでいたと思われます。こうした例はきわめて稀有でこのシリーズがヒットしたのはそうした先見性にもあったように思えます。立ち遅れた従来のメディアは皆、この動きに飲み込まれつつあります。ライブドア楽天のテレビ局乗っ取り計画もそのひとつでしたが、くさびを打ち込んだだけに終わりました。このくさびが次のステップになるかどうかは来年の課題でしょう。

 私もブログを持つ者としてはこの動きは気になるところですが、所謂人気ブログと言われるブログは有名人のブログで内容は二の次でその人が書いている、ということで人気を得ているのがほとんどです。しかし、作家でもタレントでも学者でもない人の書いたブログが圧倒的人気を得て、世論を作り出す。そしてそれが一般に波及する、ということがもうすぐ起こるのではないでしょうか。ただ、それが本当に面白いのか、そしてそれが真実なのかはわかりません。なぜならネット世論はマスヒステリア、そのものであり、ブログ炎上やまつりという言葉で言い表される、燃え盛っている火にガソリンを放り込んで笑いながら眺める、溺れた犬を棒で叩き、矢を射かけ、笑い者にすると言うものであるからです。言わば「面白ければOK」というのが主流で悪ふざけの一歩手前であることが多いのです。一般のマスコミが書けなかった同和問題在日韓国人の問題、障害者問題、生活保護などの問題への言及が増えるのではないでしょうか。これらの諸問題には様々な問題があり、一般マスコミがまったく批判しなかった点を指摘するのも悪いことではないと思います。が、一線を越えて踏みとどまるだけの理性がネット世論にあるのか。私は無いと思います。そういう意味ではもっと新聞やテレビにもがんばってもらいたいと思います。やられっぱなしじゃないですか。報道人としてのプロ意識の喚起が必要であると思います。

 そうした中で私も一年ブログをやってきました。私がブログを作ったきっかけは、私が好きな日本映画について書かれたサイトが少ないので、ならば自分で作ろうと考えたからです。ブログを立ち上げるときに考えたのは、自分が面白いのが第一義ではあるが他人さんが読んでも面白い文章を書きたいなあ、と。映画ファンに読んでもらって興味を持ってもらえるような文章を心がけてきました。映画ファン以外の方はもっととっつきやすいプロによるブログがいっぱいありますしね。自分の感想を列ねる、これが一番楽なわけですが映画ファンの評価って本当に人によって違うわけで他人の感想ってあまり当てにならないわけです。これは正直な感想です。ですので、こんな監督がこんな脚本でこんな俳優使って映画作ってるよ、というデータに自分の感想を加味するかたちで書いております。そのためには広くデータを集めねばなりません。ネットの情報もそうですが映画関係者の書いた本もよく読みました。そんなやり方でやってたので、作品によっては映画の上映時間以上がかかった映画の感想もあり、非常にしんどい作業でした。金ももらわんのにどうしてそこまでやるか、と言うとそうしたことを通じて映画をよりよく知れること。そしてそれが楽しい、ということに尽きます。ただそこまでやっても自分の感想が批評になっているとは考えにくい。映画評論家、特に山根貞男さんはすごいな、と思いました。

 さて私にとってのこの一年ですが、「生きてるだけでめっけもの」だと思ってるんでこうして年末を迎えられただけでも「勝ち」だと思っています。しかしまあ、思い出すとあんまりいいことはなかったですな。仕事では嘱託の爺様には随分悩まされましたし、上司が変わったのでしんどいところもありました。仕事以外でも。。ここには書けないような厭なことがありましたねえ。。年取る一方で体にも不安が出てきました。それから見事にリバウンドしましたね。笑ってしまいました。今年は30日に見た「ポピーとディンガン」で204本の映画を見ました。うち90本がリバイバルや映画祭上映分で今年封切された映画で見たのは104本でした。ベストテンはまた1月の早い時期に発表したいと思います。

一年間、お付き合いいただきまして、ありがとうございました。また来年も読んでいただくと幸いです。皆様、よいお年をお迎えください。

2005年12月31日 自宅にて

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