大停電の夜に　 - ほぼ日本映画専門サイト「キネマの星座」

★大停電の夜に　１２／５　TOHOシネマズ高槻スクリーン６
★★★
→「東京タワー」の源孝志の作ったデートムービーでこんなのはあまり好きではないが、手間隙かけて丁寧に作られた佳作であった。一日を舞台にしたアンサンブル・ドラマは大好きなので、その設定自体でもにんまりしてしまったが脚本もいささか技巧に走りすぎだとは思うがまあよくできており、じっくりと見ることができた。いくつかのエピソードがあっていらないものもあったが映画のリズムは壊していない。

　一番好きなのは淡島千景と宇津井健のエピソードで御年81歳になる淡島千景の落ち着いた演技が素晴らしい。大停電の夜に秘めた思いをぽつぽつと語り出す。逸る心を抑えきれない感じがよく出ていた。逆に宇津井健はキレてアメ車を盗んでしまう、やんちゃな老人を上品に演じてみせた。若い頃、もてたんだろうなあと思わせる洒脱さも感じさせる。この人は主役よりも脇役で演技を発揮する人で最近は晩年の嵐寛寿郎のような円熟した演技を見せてくれる。

　田畑智子と豊川悦司のバーでの語らいも印象的だ。特にこうした映画での田畑智子の存在感は素晴らしい。役柄はたいしたこと無い割には彼女を中心に映画が回っているような感じさえ、受ける。本当に可愛くなったねえ。

　吉川晃司と寺島しのぶのカップルのエピソードも面白いがこのエピソードはもっと時間をかけて描いてもいいような気がした。