今見ておかないともう死によるかもしれへん。まだ元気なうちの談志を見れてよかったよ
なんばグランド花月であった「談志vs文珍ふたり会」を見てきた。長らく演芸ファンやっとるがNGKははじめてであった。吉本はあんまり好きじゃなくて、足が向かなかったのだが行ってみると天井も高く、立派な施設であった。しかし、席の間が大変に狭く、移動に苦労した。一番最悪だったのは前に大きな男が座ってしまい、見るのに苦労したことだ。まあこれは本当に運が悪かった。。としか言いようがないのだが、施設にも問題があると思うぞ。首を振り振り見ていたのでたいそうしんどかった。しかし落語会はそうしたしんどさを吹き飛ばすほどの素晴らしい出来であった。
桂文珍と言えばニュース番組の司会が有名で「落語をしない落語家」が世間のイメージであったが、落語会で客を爆笑の渦に巻き込んで確かな落語の腕を昔から見せていた。私も文珍の落語なんて。。と思って実際に聞いてみるとおっそろしく達者で舌をまいた。その文珍がテレビの仕事を減らして本格的に落語に取り組み始めた。それだけでも見に行く価値がある。本会では「胴乱の幸助」と新作の「老楽風呂」を披露。「胴乱の幸助」では浄瑠璃の一節を語り、おっそろしく大真面目な幸助さんを愛らしい人物に描いてサゲまで軽やかに運んでいく語り口に酔わされた。「老楽風呂」は一度聞いていたが、笑いの渦に巻き込まれて時を忘れた。前から達者だと思っていたがここまでできるとはねえ。。やっぱりまた落語聞かねば。
さてさて立川談志である。実は談志の落語を聞くのはこれがはじめて。ナマで見るのがはじめてじゃなくて、テープでもテレビでもラジオでも聞いたことがないのだ。中学生の頃、上方落語は大阪や京都の落語会に足しげく通ったが一番よく聞いていたのはテレビやラジオ、もしくは図書館の視聴覚コーナーであった。私にとって東京落語はラジオであり、三遊亭円生や古今亭志ん生などの昭和の名人のCDであった。そこで談志を聞く機会がなかったのだ。当時はもうくまなくチェックしていたから、大阪で談志の落語を聞くことはほとんどなかったのだろう。大体、テレビやラジオではやらないし。そういう意味では今回は本当にいい機会になった。はじめての談志がナマなんである。談志も今年69歳。本人が言うように「体がついていかない」状態は感じられたが、世の中に談志ファンが多数いる理由はわかった。好き嫌いは別にしてこんな落語家は他におらん。語り口は志ん生に似ていて、抑揚は少ないが語り口に、客を自分の世界に引っ張り込む力を感じられた。メリハリはあまりないんだが、次第に聞き込んでいくうちにどっぷりとハマりこんでしまう。お涙頂戴の代名詞みたいな噺である「子別れ」をドライに子どもの視点に描いてしまう工夫もうまいと思った。「子別れ」ってもう泣かそう、泣かそうとした工夫が満載でガキも変にいい子だし、もう本当に大嫌いな噺なんだが談志の「子別れ」は面白かった。小遣いをもらった子どもが「これで青鉛筆買えるな。そしたら海を描ける」と呟くところは狙いすぎと言えば狙いすぎなんだが、子どものキャラクターに深みをつけていて面白かった。今はCDもたくさん出ているし、「遅れてきたファン」としてさかのぼって聞いていこうと思う。
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