大番 完結編

☆大番 完結編 9/25 高槻松竹セントラル(特集上映人生名画劇場)
★★
→シリーズ最終作。戦後になって兜町に戻ったギューちゃんがまたもや大活躍する映画でチャップリンさん役の東野英治郎をはじめとしてシリーズ通してのレギュラーが総結集して賑やかな映画になっているが、ストーリーは後日談のような雰囲気をぬぐえずにあまり面白いとは言えない。何より、ギューちゃんのキャラが完全に変わっている。加東大介もすっかりギューちゃんになりきっており、一作目で見たような人の良さもすっかり消えてしまい、ただの成金にしか見えなくなっている。女優陣では秘書役で団令子が登場。キュートでどこか小ずるい現代娘(当時)を好演している。彼女は東宝喜劇の申し子みたいな女優さんで後に「お姐ちゃん」シリーズなどでも大活躍します。同じく千葉監督の「がめつい奴」の好演もよかった。原節子の出番は少しであったが、効果的に使われていて儲け役。ギューちゃんのモデルとなったのは佐藤和三郎。新潟の田舎出身で兜町の名物男と言われた証券会社の社長です。映画の中で、マナーが悪くてゴルフ場を追い出されたギューちゃんがゴルフ場を作ってしまうという話が出てきますがこれは実話。映画同様に戦後は株式相場がすっかり落ち着いてしまい、持ち株制度によるメインバンク制で株式市場もダイナミックさをなくしていきます。佐藤氏もやがて兜町から姿を消し、「大番」の時代は終わったのです。なお「大番」という題名は獅子文六が「並外れた男」という意味でつけた造語です。