日本のいちばん長い日

☆日本のいちばん長い日 8/11 大津京町滋賀会館シネマホール
★★★★
半藤一利の原作も読んでみたが、よくもまあこれだけ膨大な資料が集まったものだと思う。本が書かれた1965年当時は関係者の大半がいまだ健在だったことも大きいが戦後から20年という時間もたって、「今だから話せる」ということでこれだけの証言が集まったんだろうと思う。当時、文藝春秋の編集次長だった半藤一利は「総合雑誌の編集部員が戦時中のことを知らないというのはよくない」と社内で研究会を作り、調査を始めたらしい。映画の中で阿南陸相切腹に立ち会った竹下中佐と井田中佐(映画では高橋悦史が演じた。なんと現在も健在らしい)への著者はインタビューから関係者への聞き込みなどに関係者の残した日記など集められるだけの資料を集めている。名義が大宅壮一になっているのは、当時はまだまだ戦後が生々しく思い出される時代で実名も多く登場するので各方面からの批判をかわすために大ジャーナリストの大宅の名前を使ったのだろう。現代の我々から見ると沖縄を取られて、抗戦もクソもないだろうと思うが実に終戦への道は困難だったことがこの映画からわかる。当時は陸相が辞任を叩きつけたら内閣が崩壊したのだ。事実上、陸軍の賛成なしでは何も決められなかったのだ。御聖断で決定するという反則技無くして8月15日の終戦はなかったのだ。今の小泉を見ればわかるが強引なやり方には必ず非難が起こる。それがあのクーデターだったのだ。実際にこの事件以外にも小さな陸軍の反乱はたくさん起こったらしい。なお、映画の中で天本英世が演じた佐々木大尉は鈴木首相の私邸を焼くも反乱は失敗。その後、時効まで潜伏したらしい。時効になって佐々木は鈴木首相の長男に謝罪しに行ったが「あんなことでもしなければ、腰抜けのように思われたでしょう」と慰められたとか。あの1日はまさに革命だったのだ。タイトルの「日本のいちばん長い日」はノルマンジー上陸作戦のドキュメンタリーが「ザ・ロンゲスト・ディ」なのから取られたらしい。東宝創立35周年として予算がたっぷりかけられたそうだが関係者はヒットすると考えてなくて「作ることに意義がある」ぐらいに思ってたらしい。結果は大ヒットで岡本喜八の映画で一番の興行成績をあげている。

運命の八月十五日 日本のいちばん長い日 〈決定版〉

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脚本家・橋本忍の世界 (集英社新書)

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kihachiフォービートのアルチザン―岡本喜八全作品集

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日本のいちばん長い日 [DVD]

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