ヒトラー 最期の12日間

ヒトラー 最期の12日間 8/7 MOVIX京都シアター9
★★★★★
→第二次大戦末期のドイツを舞台にヒトラーの自殺までの12日間を描いている作品。監督は「es」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。ドイツにおいてヒトラーを題材にするというのはタブーでドイツ語でドイツ人の俳優によるドイツの監督の映画というのはほとんど無く、画期的であり、またスキャンダルな出来事であったらしい。しかも主演がドイツが誇る名俳優の「ベルリン・天使の詩」や「永遠と一日」などの主演作があるブルーノ・ガンツである。これは内容よりも、作られた時点で既に画期的であったと思う。こうしたドイツ映画の勢いが東ドイツとは共産主義とは何だったかをドイツ人自身が総括した「グッバイ!レーニン」「レボリューション6」と言った映画の係累に当たることはまず間違いないであろう。本作で監督が描きたかったのは極限状態の人間の行動だろうと思う。この映画の主役は誰か。ヒトラーかもしくは秘書のユンゲなのか。私はこの映画の主役は「国の滅亡による極限状態」だったと思うのだ。その状態に直面した人々による群像劇である。もはや敗戦しか考えられない事態になってやっと目を覚まして自殺を決意するヒトラーヒトラーの錯乱に巻き込まれて何も考えられなかった側近たちの時間がやっと動き出すのだ。ヒムラーゲッベルスシュペーアゲーリング、ボルマンと言った有名なナチスの幹部も出てくるが印象に残ったのはヒトラーの最後を看取った側近達であまり歴史にも登場しない人々である。ヒトラーの命令に疑問を感じながらもドイツ陸軍の誇りにかけて町を守り続けた司令官、国際法で保護されるべきことを知っていながらもヒトラーに殉じた外交官、軍人であるよりも軍医であろうとし、荒れ果てたベルリンにとどまった軍医、脱出を希望しながらもヒトラーに拒否されて夕食の最中に手榴弾で一家心中した側近。。爆弾が降る中で下級軍人たちが暴徒と成り果てて、市民を次々と殺していく様子も描かれている。運命に翻弄されながらも、顔色一つ変えずに黙々と力強く生き抜いていくヒトラー・ユーゲントの少年が印象的だ。この映画の狂言回しとなったユンゲはこうした状況をどう見ていたのか。その答えはラストで年老いたユンゲ自身から告白されるのだ。(ユンゲは晩年にドキュメンタリーに出演している。偶然にも彼女が人生を終えた日はそのドキュメンタリーがベルリン映画祭で上映された日であった。)ユンゲをやった女優さんが実に美しい女優さんであった。2時間35分もある映画であるが長さは感じない。ぜひ見ておいて欲しい作品である。

ヒトラー 最期の12日間

ヒトラー 最期の12日間

私はヒトラーの秘書だった

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劇画ヒットラー

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