とりあえずは昨年の感想から懸命に更新していく心積もり

平田昭彦

P>星による評価はあくまでも目安。5つ星で評価しとります。大体が星4つから2つまでの範囲です

★★★★★・・・映画ファンならば必ず見るべし

★★★★・・・・ぜひ見ておきたい作品

★★★・・・・・映画館で見ても損はなし。ここまでは標準

★★・・・・・・時間がないならスルーでもOK

・・・・・・・金払う価値なんてない

星なし・・・選外。フィルムの汚れは映画とは認めない。



☆・・・日本映画旧作

才女気質 

才女気質 4/5 高槻松竹セントラル(女性映画傑作選11)
★★★★★
→これだけの京都ブームの中で京都を舞台にした映画として紹介されないのが不思議なんだが、京都を舞台にした隠れた大傑作である。監督は日活の「才気あふれる問題児」だった中平康

 現在の中平の評価って如何にゴダールに影響を与えたかという観点からしか語られなくて「砂の上の植物群」とか「月曜日のユカ」と言った芸術要素たっぷりの作品群からのアプローチばかりなのだが、私はプログラムピクチャーとして低予算でスピディーなコメディ映画を作った職人能力に注目したい。

 しっかり者の轟夕起子を中心に京都の表具屋さんのドタバタを描いたコメディ。アメリカのコメディのように多彩なキャラクターをくっきり描き分けて、テンポいいコメディを撮っている。主人公の轟夕起子は世間体を何よりも気にする典型的な京都人。

 それに対して仕事よりも珈琲屋に通うことが大事な夫、大阪志郎 商売は表具屋の職人、家を継がずにテレビ大阪に就職してしまった長男の長門裕之、その嫁がこれが映画初出演になる吉行和子、デパートでアルバイトしながら恋愛に精を出す、長門の妹が中原早苗、区会議員を目指す殿山泰司、これは轟の弟、姉の轟とは全く正反対な性格の妹、渡辺美佐子、兵隊に行った息子を待ち続けるお婆さんに原ひさ子(この頃からばあさんだ!)と個性派キャストがずらり。長門裕之中原早苗轟夕起子は中平作品の常連さんですな。

 轟夕起子宝塚歌劇から映画界入り。破格の契約金で日活に入社しました。当時、映画はまだまだ海のものとも山のものともわからない時代でトップスターだった彼女の映画入りはセンセーショナルですが、これもマネージャー、当時はまだそんな言葉はありませんが、父親のそろばんずく。「宮本武蔵」のお通役で人気を博します。1940年にマキノ正博と結婚。マキノには当時、好きな役がいたそうですが死の床についた母親が無理やり、話をまとめた。元より、気が乗らなかった話で10年後に離婚。ここで暗躍したのも轟の父親で「映画渡世・地の巻」でもその銭ゲバぶりが暴露されている。彼女には小児麻痺の弟がおり、結婚後も同居して面倒を見ていたらしく、私生活は恵まれなかった。マキノと離婚後に監督の島耕二(男前)と再婚しますが、後に離婚。その二年後に49歳の若さで没している。

 戦後はフリーで活躍するが徐々に太り始めて、ヒロインはしんどくなってくる。50年代に入ってくると労働争議も落ち着いてくると各社ニューフェースが出てくるので、徐々に脇に回るようになる。中平康の作品には1957年の「誘惑」。キツネ眼鏡がトレードマークの生命保険の勧誘員を好演。「あいつと私」のカリスマ美容師役もなかなかの好演であった。中平作品での彼女は存在感が際立っており、中平康も気に入って使っていたのがよくわかる。

 劇中に幾度も出てくる。「あれはかしこい女やさかいにな」。女に「かしこい」は褒め言葉ではありません。それが京都人の評価だとしたら。。まあおそろしい。推して知るべしでございます。市電が走っている頃の京都の町並みに京都を代表する珈琲店イノダコーヒーも登場といろんな意味で京都好きには欠かせん作品。

映画渡世・地の巻―マキノ雅弘自伝

映画渡世・地の巻―マキノ雅弘自伝

美しき母

☆美しき母 4/5 高槻松竹セントラル(女性映画傑作選11)
★★
原節子主演の母物ですな。監督は原節子の親戚だった熊谷久虎。子役の演技がちとクサくて、ストーリーはありきたりだが、原節子の熱演が胸を打つ。多々良純が出てるが1955年から初老のオッサン役だったのでびっくりした。悪役ばっかりの稲葉義男も出てくるがこの映画、悪人は出てこない。最後に佐分利信が父親役で出演しているが、昔の佐分利さんって割りと軽い芝居してたのね。後世のガチガチの演技しか知らんかったので意外だった。

愛のうず潮

☆愛のうず潮 4/7 高槻松竹セントラル(女性映画傑作選11)
★★★
竹中労の盟友だった梶山季之原作のメロドラマ。このドラマはテレビドラマで読者の葉書を参考に毎週脚本を書いていたらしい。「冬のソナタ」みたいなことは昔の日本もやってたのね。監督は「警察日記」の久松靜児。主演は新珠三千代 。私は長らくこの女優が苦手だったのだが、本作の運命に翻弄される主婦を世帯やつれな雰囲気をうまくだしている。冷酷無比で嫁を下女と広言する、彼女の夫を演じた平田昭彦もいい。この人はやっぱり悪役がいいなあ。

警察日記 [DVD]

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氷壁

氷壁 4/7 高槻松竹セントラル(女性映画傑作選11)
★★★
井上靖の原作を映画化。幾度もドラマ化されているが、映画化されたのは1958年に大映で映画化された本作のみ。監督は増村保造で脚本は新藤兼人。登場人物が感情を堂々と語るという増村節が炸裂。当時の増村はデビューしたばかりでまさに新進気鋭。気合十分であった。山本富士子の美しさが目をひくが、小坂の妹を演じた野添ひとみが愛らしい。彼女は初期の増村保造作品によく出た。「有楽町で逢いましょう」の彼女も可愛かったなあ。菅原謙二の上司に山茶花究。主人公の迷う心を一刀両断に談じる大人のオッサンを好演。この人も実は増村作品での出演が多い。気に入ってたんでしょう。

氷壁 (新潮文庫)

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