歌舞伎鑑賞教室に行く

 日曜日。南座歌舞伎鑑賞教室に行く。前から興味はあったんだが、行くのは今年がはじめて。席は自由席で桟敷の特別席に座ることもできるとあって、長蛇の列で開場時間につくも席は二階席の後方。いつも利用している会社の福利制度でゲットしている席と変わらん。もっと早く来とけばよかった。まあ休日だしな。。。

 歌舞伎鑑賞教室は中学生の頃から知ってて、今年で15年目。歌舞伎のイロハを舞台装置や実演を交えての解説に浄瑠璃もたっぷり聞かせての簡単な舞踊劇。時間は1時間程度だが、何より2,000円で南座で歌舞伎が楽しめるという面白い企画である。気軽に行けるのが嬉しい。会場には若い10代のお客さんも多く、毎年見に来る人もいるとか。また解説も通り一遍等の歌舞伎の説明ではなくて、毎年趣向を変えて歌舞伎ファンでも充分に楽しめる内容になっている

 解説は桂九雀桂枝雀の六番弟子で軽妙な語り口が魅力な落語家である。私は高校生時代、毎週のように落語会に通っていたが、よく通ったのは桂九雀とその兄弟子、桂雀松の勉強会(小規模な、お寺でやったりする落語会をこう言う)であった。この二人で昔、ラジオ大阪で「こんばんわ 米朝事務所です」という番組をやっており、私はそこの常連であった。番組終了後も「月刊 こんばんわ 米朝事務所です」というイベントが月一回のペースがあって私も何回か参加している。(半年で終わってしまったが)今から10年ほど前のことである。当時の私は落語家になろうと半ば本気で思っていた。。

 話題がそれた。落語家は年を取らないのか、久しぶりに見る九雀さんはほとんど変わらなかった。解説ではお客さんに歌舞伎の衣装を着てもらうという企画に加えて、附け(ツケ)の解説、せり(せりあがち)の説明と実演、回り舞台の実演などなど。圧巻だったのはせりの実演。舞台の上にある13のせりが一気に動き始める様はなかなか勇壮であった。舞台がぐるっと回ってしまう回り舞台も江戸時代の元禄に活躍した、座付作家並木正三の考案によるものなのだからすごい。なお、この回り舞台がドイツに伝わり、そこから汽車の方向を変えるシステムができたらしい。

 休憩をはさんで、舞踊劇、銘作左小刀「京人形」。伝説の彫り物職人、左甚五郎が吉原の傾城に惚れてそっくりの人形を彫り上げた。左甚五郎は本当にいたかどうかわからん人なのですが、落語でもよく出てくる伝説の左官「竹の水仙」では竹で作った水仙の花が咲いたりする。そんな名人の彫った京人形なので魂が宿ったかして、動き始める。喜ぶ甚五郎だが、魂と言っても甚五郎の魂なので動きが男。以前に傾城が落とした鏡を拾っていたことを思い出して、人形の懐に鏡を入れると途端に動きが女に。しかし、鏡を落とした途端にまた男の動きに。。昔の人ってのは面白いことを考えるもんです。京人形を演じるのは歌舞伎鑑賞教室に連続出演している上村吉弥で甚五郎は片岡進之介女形の格好で男のしぐさで腕組みしてしまう様が面白い。その人形に一喜一憂して踊ってしまう甚五郎も微笑ましい。

 終わってから、歩いて三条新京極に向かうとふらふらと歩く九雀氏を見た。終わってから15分ぐらいしか経ってないのに、何で南座から新京極に。。タクシーか?