この胸いっぱいの愛を
★この胸いっぱいの愛を 11/13 TOHOシネマズ高槻 プレミアスクリーン
★★★★
→はっきり言ってあんまり期待していなかった。塩田明彦の才能は認めるが前作の「黄泉がえり」ももう一つだったし、その二番煎じではたかが知れている、と思っていた。本作を見たのは、TOHOシネマズの無料パスを手に入れたからであって「ついでに見とくか」みたいな感じであった。が、期待値が低かったからか、これが実にいい作品だったのである。
そしてこの年一番泣いた映画であった。日本映画に滅多に無い嬉しい不意打ちである。唐突にタイムスリップするところからストーリーは始まり、80年代の門司を舞台にストーリーはゆったりとしたテンポで進み、徐々に謎が解かれていく。前作の「黄泉がえり」はストーリーも凝っていたし、登場人物も多くて賑やかで見応えのある映画ではあったが、その分ごちゃごちゃしており、ひどく疲れた。それに比べると本作はストーリーにさほどのドラマを詰め込まず、何気ないドラマを淡々と撮っており静かな映画になっていて、入り込めた。丁寧に絵作りをしており、のんびりとした港町が綺麗に撮られていているのもよい。
キャストは伊藤英明、勝地涼、ミムラとやや軽量級であったがこれがまた一人一人がいい演技を見せてくれる。主演のミムラがいい。笑顔がとてもチャーミングで近所のお姉さんという感じがよく出ていた。ふっとした時に見せる、寂しさを感じさせる顔がキャラクターの背景を色濃いものにしていたと思う。若いキャストが多い中でベテランの味をたっぷりと見せてくれた吉行和子、愛川欽也もよかった。伊藤英明とミムラのストーリーがメインでサイドストーリーとして勝地涼が母親と出会うストーリーと倍賞千恵子と宮藤官九郎のストーリーが用意されている。メインもよかったがサイドストーリーも出来栄えもよく、そちらの方が印象に残るほどであった。勝地涼が自分の母親である臼田あさ美と出会うシーンは涙をボロボロ流して泣いてしまった。あとどうでもいいかもしれんが、諏訪太朗だなあ。あんな出番だとは思わんかったよ。
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