寺内貫太郎一家スペシャルを見た

 13日に放送された「寺内貫太郎一家スペシャル」を見る。私のような「遅れてきた」視聴者にとって久世光彦と言うと90年代の「小石川の家」のようなかっちりとしたホームドラマを作る人のイメージが強いのだが、昔の作品は全く違うイメージを植え付けてくれる。久世さんも「寺内貫太郎一家」の頃はまだまだ新進気鋭でかなり作りが独特である。大体、主役を全く演技未経験だった小林亜星にやらせるという発想がすごい。喧嘩のたびにふすまはドリフ並みにぶっ壊れるし、カメラワークもすばやい。「時間ですよ」の頃からファンだった母親も第一回目から見てた口だが、変なドラマが始まったなと思ったらしい。不真面目ではないが、かなり遊びが入っててそれがすごく、いいアクセントになってて面白い。

 キャストがすごい。当時31歳で婆さん役だった樹木希林は演技が大仰過ぎてびびるし、小林亜星は不器用に怒鳴り散らしてるし、梶芽衣子藤竜也の日活コンビもどう見ても市井の一家に見えずにバイクでどっか行ってしまいそうだし、まあよくこのキャストを切り回したもんだ。そうしたキャストの違和感を逆手にとって、「藤竜也がよくこんな役やるな。。」と視聴者の興味を惹く効果も生んでいる。小林亜星にしても、見ているうちにその演技のぎこちなさが不器用にしか愛情を表現できない無骨な親父に見えるから不思議だ。昨今、小林亜星は朝の連ドラ「さくら」にも出て同じような役をやったが、相変わらず下手で上達してねえ。ちなみに私にとっての亜星さんは「わくわく動物ランド」に尽きる。

 樹木希林がスタジオで、いくら脱線してもストーリーが壊れなかったのは加藤治子の存在が大きいと言っていたが私もそう思った。一人は常識人で普通の人がいないとドラマはつぶれてしまうのだ。大体、婆ちゃんなんて一人で住んでたら、間違いなく猫を300匹飼って、猫屋敷とか呼ばれそうな感じだ。それから伴淳三郎の存在が大きい。脇に回った伴淳は場をさらっちまう。梶芽衣子にそっと半纏をかけるシーンはしびれた。最終回の婚礼を木遣り唄で送り出すシーンもじんと来て思わず涙が出た。名作はやっぱり見ておかなきゃいけねえ。あ、それから樹木希林が「裕也。。いい名前ですね」とニヤリと笑うシーンで大爆笑してしまった

寺内貫太郎一家 DVD-BOX 1

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