ALWAYS 三丁目の夕日 2005年 日本テレビ他

ALWAYS 三丁目の夕日 1/21 京極東宝
★★★
どうも「ノスタルジー」ってのがよくねえ。世の中悪くなるとすぐに「昔はよかった」だの「発展のかげに我々は何かを置いてきたのではないだろうか」エトセトラ、etc。私はこういう繰言が大嫌いである。だって何回言っても意味がないんだもの。時はもどらねえ、出したクソはコメには戻らねえ。きたないね、どうも。

 いつの時代にもこんなこと言う人はおるんである。桂米朝のお師匠にあたる正岡容が書いた落語に「おばあちゃん三代姿」って落語がある。「相変わらずのお婆さん専門でございまして」の古今亭今輔師匠、この人は桂歌丸の大師匠にあたる。(歌丸さんの師匠は今輔の弟子である桂米丸)この人が得意にしていた。明治時代にお婆ちゃんが江戸時代を懐かしみ、江戸の情緒に比べると「なんだい、この頃の世の中は!」と孫娘にぼやいている。この孫娘が昭和30年代になると同じようなおばあちゃんになって明治時代を懐かしんで、昭和になって全てが悪くなったと孫娘にぼやく。いつの時代だって、昔を懐かしむ人はいるのである。その孫娘が今、昭和を懐かしんでぼやく時代になっているのだ。で、この映画である。この映画はそうしたぼやきを本気で信じ込んで、過去という決して戻れない時代に憧憬を抱くような映画か。そんな厭な予感がして見る気がしなかった。実際、感想がそんな感じだったもの。監督は「リターナー」の山崎貴。今まで近未来をCGで描いた作品を撮ってきた監督ですが本作ではCGで昭和30年代の町並みを描いている。この発想の転換がヒットを生んで、大ヒットになりました。まあ本人は釈然としない気分ではあるだろうが。

 もうすぐ閉館する京極東宝は公開から随分たったので満員とは言わんが、中高年で賑わっておった。映画の感想は言うと普通に面白かったファンがうざくても作品は面白い。よくあることだ!具体的に書くと差し障りがあるので書かないがな!ラストはやっぱ泣いたしね。というか、あれは泣く。ほとんど反則である。プロレスで言うと猪木みたいに目の中に指入れるみたいなもんだ。私はCGに全く詳しくないので、どこまでがセットでどこまでがCGなんかわからんが、まあ効果的に使われてたんじゃないですか。(なげやり)しかし、あの市電が走る大通りですがあれは完全に30年代のアメリカの町並みやな。昭和30年代の日本の道路行政ってのは酷道険道、死道と言われたほどひどい道路ばかりであんなに広々とした道路はなかったはず。

 まあ、それはさておき。。この作品が面白かったのはやはりCGよりも脚本の力と俳優の力量が大きいと思います。演出はヘボです、はっきり言って。脚本は山崎貴と「相棒」を書いてる古沢良太。基本的なストーリーラインは山崎貴が書いて古沢はお笑いの部分を担当したそうですがこのお笑いの部分のドタバタぶりがいいアクセントになっていた。怒り狂った鈴木オートがドアごと蹴飛ばしてしまうシーンから間違いがわかって息子と一緒に謝るシーン、私はこのへんが一番楽しかった。ただ、もたいまさことか益岡徹を出してるんならもっと使えよ。と言うか、使いきれない。使い方がわらかない。このへんをさして演出はヘボと思う。最も本腰入れてドタバタやるんだったら渡邊孝好(「居酒屋ゆうれい」)が適任だと思いますが彼ならば、全部セットでやっちゃったでしょう。

 力道山の試合を見るシーンなんかはやりすぎだとは思うが、場面展開がはやいためか、そんなにくどくない。キャストでは鈴木オートの堤真一堀北真希がよかった。あれほど東北から上京してきた女の子が似合う人はいないだろう。演技がうまいとかでなくて雰囲気が恐ろしく出ておりました。ただ、願わくば上野樹里みたいに似合うからと言って同じ役柄ばっかやる女優さんにはなって欲しくないわね。

 それから須賀健太君ばかりが注目されているが、鈴木オートの息子一平をやった小清水一揮君のコミカルな演技も光っておりました。ただひとつ駒が足りないなと思ったのは鉢巻したオッサン。八百屋の店先でお得意としゃべってるような、町内で騒ぎが起こると一番にとんでくるようなオッサンがおりませんな。森川信とか佐山俊二とか由利徹みたいな役者が出てたらいいんだけど、今はそんな役者おらんよな。。お笑いの人も映画によく出てるんですが俳優として出演してるんであって芸人としての映画出演じゃないもんな。。

 ラストの東京タワーを見上げるシーンは秀逸。東京タワーができたのは昭和33年の暮れでした。こうした小道具の使い方は抜群にウマイ。

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