フル・モンティ〜男6人、失うものは何もない やるっきゃない〜
今日はイギリス映画の「フル・モンティ」。私がロバート・カーライルを知ったのはこの映画でした。「トレインスポッティング」の喧嘩中毒のペグビー役はえらく強烈だった。本作のような気の弱い男からドラマの「ヒットラー」や「ラビナス」(この映画をご存知の方はかなりのファンですね)や「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」のような気が狂った悪役まで幅広く演じられる俳優さんです。私はどちらかと言うと「フェイス」や「フル・モンティ」のような気の弱い男を演じた作品の方が好きですね。イギリス映画のどこかしみったれた感じがよくあってるんです。
イギリス北部の街、シェフィールド。ここは鉄鋼で盛んな町で活気に溢れていた。。時代から25年たった現在。鉄工所はつぶれ、町には失業者が溢れていた。男は青い顔して職安で仕事を探している。それに対して女性は自立しており、対照的に活気に溢れていた。町のストリップ劇場はいつしか男のヌードショーを楽しむ女で溢れかえっていた。いまや女が男を養う時代だった。
ガズ(ロバート・カーライル)もご他聞にもれずに失業者。嫁さんに愛想をつかされて、離婚。かわいい息子のネイサンの養育費も払えずに共同親権まで失いそうなんであります。700ドルという金が必要です。
ある日、親友で同じく失業者のデイブ(マーク・アディ)の嫁さんがヌードショー劇場に入る姿を目撃してしまう。劇場にこっそりと忍び込むが豪快に立ちション(!)しながら男の悪口を言い倒すおばさん達の熱気にのまれてしまいます。が、彼は思いついた。俺達もストリップをやれば、このおばさん達が豪儀に金をばらまくのではないか、と。嫌がるデイブを説得し、彼は仲間を探し出す。鉄工所の音楽隊で病気の母親と二人暮らしをしている孤独なロンバー(スティーブ・ヒューイソン)、鉄工所の元上司でウマがあわないジェラルド(トム・ウィルキンソン)、ブレイクダンスが得意な年寄りのホース(ホール・バーバー)、なんにもできないがイチモツだけは立派なガイ(ヒューゴ・スピーア)。ソシアルダンスができるジェラルドの指導でストリップの練習が始まったのだが。。
ガズと息子のネイサンとの交流が物語の主軸になっていますが、妻に失業したことを打ち明けられないジェラルドや嫁さんに養われていることに引け目を感じているデイブの話も進められていきます。仕事を失い、プライドも失った男たちがストリップを通じて自信を取り戻していく。そして男に愛想をつかした女も馬鹿にするのではなくてどことなく、好意を持って彼らを迎えるのだ。そうした様子がほのぼのと丁寧に描かれている。デイブの嫁さんなんか本当にいい人だもんな。
貧乏でもう後がない彼らなんだが、どことなくのんきなのがおかしい。練習シーンものんびりとした感じで「フラッシュダンス」を見て「なんだ、日曜大工の女の話か」「あの溶接の腕はなってない。俺のほうがうまい」と言いたい放題だったり、彼らがダンスの練習を廃屋でやってて服を脱いだところを警察につかまるシーンなど爆笑の連続です。使われる音楽もノリのいい音楽ばかりで映画の軽快なテンポによくあっています。
監督はこれが長編映画デビューになったピーター・カッタネオ。「フル・モンティ」は97年の英国アカデミー賞にノミネートされています。数年前に「ラッキーブレイク」を発表していますがもっと作品を撮って欲しい。
監督:ピーター・カッタネオ 脚本:サイモン・ボーフォイ 撮影:ジョン・デ・ボーマン 音楽:アン・ダドリー
キャスト:ロバート・カーライル、トム・ウィルキンソン、マーク・アディ、スティーブ・ヒューイソン、ポール・バーバー、ヒューゴ・スピーア
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