主人公は僕だった

●主人公は僕だった 6/7 TOHOシネマズ二条 プレミアスクリーン
★★★★
→主人公のハロルド(ウィル・フェレル)は税務署に勤める役人。変わりばえのない日常を過ごす彼に異変が起こった。突然、彼の頭にナレーションのように女性の声が響き始めた。それが今、彼の思っていることやこれからやろうとしていることなのだ。彼の平穏な生活は狂い始めた。医者に説明しても「統合失調症」との診断しか出てこずに休暇を取る事を薦められる。

 作家のカレン(エマ・トンプソン)はスランプに陥っていた。久しぶりの新作に完全に煮詰まっていたのだ。彼女は必ずラストに主人公を殺してしまう小説を書く悲劇小説の旗手で「このささいな行為が死を招こうとは、彼は知るよしもなかった。。」と書くも後が続かなかった。変人で自殺願望のあるカレンを支えたのは腕利きのフリー秘書ペニー(クイーン・ラティファ)。が、ラストでどうやって主人公を殺すかでカレンは悩む。雨の中、橋のたもとで走る車を眺めながら、彼女は交通事故の想像をしていた

 困り果てたハロルドは女の声がまるで小説の筋書きのようだと気づき、文学研究家のヒルバート教授(ダスティン・ホフマン)に相談する。私は文学研究者で精神分析家ではない、と断るヒルバートだが、ハロルドの頭に浮かんだ言葉、「このささいな行為が死を招こうとは、彼は知るよしもなかった。。」に興味を示す。そう、ハロルドはカレンの書く小説家の主人公だったのだ

 作家がカレンとは知らないヒルバートは、恋愛小説は喜劇に終わるのだから、敵対する相手と恋に落ちろとアドバイスする。つまり自分でストーリーを進めてしまえ、ということだな。彼は税の監査で尋ねたケーキ屋のアナ(マギー・ギレンホール)に恋をする。が、彼は役人。彼女にとっては敵である。二人の恋は、そして小説の決着はどうなるのか。

 設定だけでも充分面白いのだが、ストーリーの進め方も面白い。設定は面白くてもその後のストーリーが面白くなくては、全く楽しめない。本作は普通の平凡な主人公が奇想天外な世界に巻き込まれ、困惑しながらもやがて違った人生を受け入れ、楽しもうとしている様が中心になっており、好感が持てる。変人ばかり出てくるスクリューボールコメディ風味になっているもいい。カレンを演じるエマ・トンプソンがめちゃくちゃいい。シリアスな演技ができる女優だが、こうした変人を脇で演じると映画にぐんと深みが出る。唾液で湿らせたティッシュで煙草の火を消すスリッパでテーブルの上でたたずんでいる、雨の中で煙草吸いながらずっと走る車を見ながら、頭の中では交通事故の想像。。虚無的で自殺志願者。。ロクなもんじゃないが、突き放しきれない愛すべき変人になっている。ハロルドを心配してんのか、面白がってるのか、わからないダスティン・ホフマンも脇で存在感たっぷり。最近、こうした小品にひょっこり出演することが多くなったなあ。「ニューオーリンズ・トライアル」とか少し古いが「ワグ・ザ・ドッグ ウワサの真相」とか近年では好きよ。監督は「チョコレート」でハル・ベリーにアカデミー主演女優賞をとらせたマーク・フォースター。純然たるコメディにしなかったのがエラい。

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