トム・ヤム・クン!

トム・ヤム・クン! 5/3 TOHOシネマズ二条スクリーン3
★★★
→おとなしい人はあまり怒らせない方がいい。怒るとめっちゃ怖いかもしれないから。麻薬の取引現場であろうと記者会見であろうと「象を返せ!」と乗り込んでくるトニー・ジャーを見てそう思った。

 数年前、「マッハ!!!!!!!!」でアクション映画ファンをうならせたブラッチャヤー・ビンゲーオとトニー・ジャーの新作がやってきた。「CGは使いません!ワイヤーも使いません!」という謳い文句の宣伝もうまかった(あの宣伝が下手で有名なGAGAの仕事とは思えん!)のだが、本当にボッコンボッコン蹴り上げている様はやはりすごい迫力で幾度も息を呑んだ。日本でも公開規模が小さい割には5億と言うまずまずな収益をあげたのだが、アメリカやフランス、香港、韓国でもそこそこヒットしたらしい。本作はそのヒットを受けて予算が増えたのか、アクションもさらにすごくなっている。前作も90年代香港映画テイストだったが、本策ではその傾向が深まり、ジャッキー・チェンの「ポリス・アカデミー」っぽくなっている。警官も出ているから余計にそう感じるのか、ドラマに軽さも加わって面白くなっている。

 前作では仏像を盗まれたトニー・ジャーが香港に乗り込む話だったが本作は象である。で、ストーリーはあんまり変わらなかったりする。家族のように可愛がってた象の親子を盗まれたトニーがオーストラリアに乗り込む。全編を通じてアクションの連続であるが、ドラマ部分には全くと言うほどトニー・ジャーが絡んでこないというのがすごい。マフィアや警察内部の汚職が絡んでくるのだが、トニー・ジャーにしたらそんなことはどうでもいい。ひたすら「象を返せ!」のみである。まあドラマはあんまり気にしてないのでしょう。前作でトニーの相棒だったチンピラを演じたペットターイ・ウォンカムラオも出てくる。前作ではドラマ部分はもっぱらこの人の担当だったが本作では登場が少ないのでドラマ部分がかなり味気ないもんになっているのがやや残念だ。マダム・ローズの横にいた中国人が堺正章に似ていて最後に何かやるかなと思ったが、何もせえへん。

 前作よりも予算が増えたのか、アクションは数段すごくなっている。序盤のボートでのシーンでは川岸の家を遠慮なく、ぶっ飛ばしている。ただし、本作の醍醐味はフルコンタクト。オッサンごとガラス戸を蹴破ったのにびびった(エンドロールのNG集でトニーがオッサンを抱きかかえているシーンがあったが、オッサンはかなりフラフラであった)が、そんなのは序の口だった。ローラスケート軍団とのバトル(四輪バイクも参戦してくる)に、4階建てのセットを舞台にせまり来る敵をなぎ倒す。なんとこのシーンが4分間長回しのワンカットでの撮影なのだ!すごすぎる!そしてそれに続くは燃え盛るタイ寺院でのカボエラ。刀剣使い、ネイサン・ジョーンズとの異種格闘戦。このシーンが一番すごいと思ったが、ラストにまたまたすごいのがやってくる。アジトでの50人ほどの男を相手に連続組手!戦った相手の関節をきっちり決めて叩きつけてしまう!。もうおなかいっぱいなほどアクションがてんこ盛りなのだ。そしてそれにくわえて衝撃の、、そんなアホな!というラストが待っている。立ち技の魅力にくわえ、関節技の面白さも見せてくれるすごい作品になっている。ラストにネイサン・ジョーンズをはじめとする「本当にプロレスやってました」な人々との対決シーンを持ってきたのも本物志向でグーだ。

 空港でジャッキー・チェンらしき人とすれ違うシーンがあるのだが、あれは本物なのかしらん?多分、そっくりさんだと思うけど。